インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

背伸びした仕事

  知人からイラストを描いてくれと頼まれた。音楽教室の発表会で、会場の壁を飾るのだそうだ。もう何年も、いや十何年も絵など描いていないからと辞退しかけるが、昔からお世話になってばかりの方だし、こんな時くらいしかお礼ができないので結局引き受けることに。
  パソコンのお絵かきソフト(Photoshop Element)を使ってタブレットで描くのだが、絵を見る人のことが頭に浮かぶと、すぐさま迎合的なというか、媚びたような絵になってしまって自己嫌悪に陥る。
  今から思えばほとんど冗談だが、そのむかしイラスト描きを仕事にしかけたことがある。だが、クライアントの求めに応じた絵を締め切りまでに仕上げるのが心底辛くて、すぐに挫折した。プロのイラストレーターというのは、本当にすごいと思う。
  私は頭に思い浮かべたような絵を一発で描くことができない。うまく描けるかどうかは賭けみたいなものだ。そもそもそんな輩がイラストを仕事にしようなどと考えるな〜っちゅう話だが。それに長年描いていないために腕もなまりまくっているので、なおさらうまく描けない。というわけで何度も何度も同じような輪郭を繰り返し描いては没にする*1。お絵かきソフトだから「Ctrl+z」で何度でも描き直しできる、というのが描き直しに拍車をかける。パソコン上だからたいしたことはないが、これが紙だったら反故にした原稿用紙が部屋中に散らばる作家(そんな作家が実際にいたのだろうか?)みたいになるところだ。
  結局ほぼ一日かけて六枚ほど描き、データを出力センターへ入れた。B全版サイズにプリントアウトするから、できあがりは明日の夜になるという。身の丈に合わないことをすると疲れるなあ。

*1:書家・井上有一の制作風景を撮ったビデオを思い出した。有名な一字書の大作を、有一氏は何度も何度も繰り返し書いていた。書き上がるや脇から夫人が出てきて畳ほどもある半紙を引っ張っていく。その後に有一氏が新しい半紙を敷き、また書く。この繰り返しで「花」なら「花」を延々と書き続けるのだ。