インタプリタかなくぎ流

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素朴な水墨画にあこがれて

日本橋三井記念美術館で開催されている「日本の素朴絵 ーゆるい、かわいい、たのしい美術ー」という展覧会を見てきました。その名の通り、精緻さやリアリズムとは一線(どころか二線も三線も)を画した、柔らかで大らかなタッチの絵巻・絵本・掛軸・屏風・仏画、さらには仏像などの立体作品まで、「ヘタウマ」とも「ナイーブ」とも「プリミティブ」とも違うまさに「素朴」としか言いようのない作品を集めた展覧会です。

www.mitsui-museum.jp

私は最近とんと美術鑑賞から遠ざかっていたのであまり知らなかったのですが、こうした「素朴」系の日本美術はちょっとしたブームになっているようで、展覧会を見終わったあとのミュージアムショップには「素朴絵」の関連書籍や「素朴絵」を特集した雑誌などがたくさん並べられていました。現代の、地方自治体などで取り組みがさかんな「ゆるキャラ」や、ぐでたまたれぱんだリラックマなどの癒やし系キャラクター商品にも通じるような作品群には確かにほっこりさせられます。

どんな作品が並んでいるかは、ここで図版をコピーするわけにもいかないので、ぜひGoogleで「素朴絵」を画像検索してみてください。こういう墨一色の水墨画は、山水にしろ花鳥風月にしろちょっと高尚すぎて現代人の感覚からは遠いところにありそうなイメージですが、同じ水墨画でも「素朴絵」となるとかなり親しみを感じることができます。なかには「ほとんどマンガの筆致じゃないの?」と思えるような作品もあって、楽しみました。

私も以前はこうした水墨画の世界に憧れて、自分でいろいろと描いていた頃がありました。ただ描くだけでは飽き足らなくて、自分の勤めている職場の広告に使ったりもしました(広報担当だったのです。公私混同ですね)が、結局才能の乏しさゆえにそれっきりで、今では筆を持つこともありません。当時描いた絵が少し残っているのでさっきファイルから引っ張り出してみたんですけど、う〜ん、これは素朴絵ではなく、何だか小賢しいイラストふうですね。

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筆の使い方も自己流で、水墨画の伝統に全然則ってない感じがします(黒い墨の線は「ぺんてる」の筆ペンで描いたんでした。薄墨は不祝儀用の筆ペンです)。やはり優れた芸術というのは、伝統をしっかり学んだ上に、なにがしかの才能が乗っかって新しい境地をひらくものなんですね。