インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

やりたいことをできることに変えていかない限りは、できることを仕事にできない。

タレントの小島瑠璃子氏が「中国での活動を見据え、来年から中国の大学に留学します」と発表しました。……って、私は日本の芸能界についてまったく疎い人間なので、氏がどういう方だかもほとんど存じ上げないのですが、ChromeGoogleニュースを何気なく開いたら、そんな記事が表示されたのです。

Googleさんは個々人の利用状況から判断してその人が興味を持ちそうなニュースを配信してくるようですから、中国語関係の仕事をしている私も興味を持つだろうと判断したのでしょう。それはさておき、そういったニュースについているコメント欄に、ネガティブな意見が数多く連なっているのが興味深いと思いました。

とくにアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問して米中間が緊張し、それにつられて日中間もぎくしゃくしているこの時期だっただけに、なぜそのような国にわざわざ? というトーンのコメントが多いように見受けられました。もちろんコメントの中にはそれらに対して「大きなお世話だ」という意見や、小島氏のチャレンジを応援する意見も散見されはしたのですが。

newsdig.tbs.co.jp

私もかつてサラリーマンをやめて中国に留学しました。たしか35歳くらいのときだったと思います。貯金もなく、それどころか知人に借金をしている状態で脱サラし、中国政府の奨学金を得るために一年間試験勉強をした末の留学でした。当時、中国の経済がにわかに上向き始めていた頃だったので、周囲からは「ヤツは将来を見越して中国に賭けたのだろう」と思われていたようですが、実は私自身は、ほとんど何も考えていませんでした。

う〜ん、いまから考えるともう少し何か考えておいてもよかったような気がしますが、当時はただただ中国語が話せるようになりたいという、ただそれだけの理由で脱サラの上、留学したのでした。いわば語学に、中国語そのものに関心があっただけで、その先は本当に何も考えていなかったのです。

ましてやその中国語を仕事に使おうとか、これからは中国語をやっておくと就職に有利だとかはまったく考えていませんでした。「またまた、嘘でしょ、カッコつけやがって」と言われるかもしれませんけど、これが本当に本当なんです。若さゆえとはいえ、ちょっと向こう見ず+世間知らず過ぎて我ながら恐ろしいです。

ニュースによれば小島氏は、将来的に中国での芸能活動を視野に入れての留学だそうですから、私などとは違ってよほど計画的、目的意識的です。それはともかく、いまできること、いまできていることをいったんカッコに入れて、それ以外の可能性、しかも自分がやってみたいことに賭けるというのはいいことだと私は思います。広い世界を見通せない人からはあれこれ言われるでしょうけど、そんな偏狭な声に耳を傾ける必要はないんじゃないかと。


https://www.irasutoya.com/2017/11/blog-post_47.html

そんなことを思いつつ、COTEN RADIOのボーナスエピソードを聞いていたら、パーソナリティーの深井龍之介氏が「給料下げてでも自分がやりたい仕事の領域を増やして、やりたいことをできることに変えていかない限りは、できることを仕事にできない」という話をされていました(発言そのままの書き起こしではありません)。おお、なんだかまたシンクロニシティの香りが。有料コンテンツ*1なのであまり詳しくは書きませんが、概略こんなお話です。

ほとんどの人が給与を下げたくないと思っているけど、それをやめたほうがいい。給料下げてでも自分がやりたい仕事の領域を増やして、やりたいことをできることに変えていかない限りは、できることを仕事にできないから。できないことに対してチャレンジしている時間を常に確保していないと、できることが増えていかない。できることでお金をもらうというのは消費であって、投資じゃないわけ。投資の領域というのを常に三割以上持っていないと、資本主義の中でそもそも自分の価値が回っていかないんです。これ、すごく大切な原理なんですけど。
ボーナスエピソード#15 やる気が出ない時はどうすればいいか?

なるほど。確かに自分がやりたいことを仕事にできている人はあまり多くはなさそうです。本当にやりたいことではないけれども暮らしを成り立たせて行くために稼がなければならない、とか、将来やりたいことをできるようになるために今はとにかく我慢して働き続ける(そして貯金する)という方がほとんどでしょう。かつての私もそうでした。

でも一時的に自分の稼ぎを削ってでも、やりたいことをできることに変えていかない限りは、それ(=できるようになったやりたいこと)を仕事にできないんですよね。当たり前といえば当たり前です。でもそこになかなか踏み出せない。特に歳をとって、所帯を持って、子供がいて……などとなっていくとますます難しくなりそう。だからこそお若い方はもう少し「あとさき考えず」にチャレンジしてもいいんじゃないかなと思います。そういう意味で私も小島氏を応援したいです。

……と、ここまで書いて思いましたけど、べつに若くなくたって、つまり私みたいな初老の人間だって同じですよね。できることでお金をもらえる状態、つまり消費にだけとどまっていないで、投資の領域も常に持ち続けていないと、セカンドキャリアの構築などおぼつきません。私はたぶんいまが自分の人生でいちばん稼げているときだと思いますけど、それを減らしてでも次なる方向へシフトしていかねば。そう思いました。

*1:COTEN CREWになると聞けます。https://cotenradio.fm/support