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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ワイナート

  ワイン好きなら誰もが知っている雑誌に『ワイナート』があります。なぜか美術出版社という発行元から出ている雑誌です。
  個人的にこの出版社には思い入れがあって、学生時代はここの『美術手帳』を定期購読していました。もっとも、講読はしていても熟読はしませんでした。むしろ書棚にバックナンバーが整然と並んでいることにある種の満足を得るような存在で。というわけで、それらは卒業と同時に四年分(いや、留年したので五年分か)が二束三文で古本屋へたたき売られることになりました。
  いや、それは置いておいて、今は隔月刊のこの『ワイナート』を講読……なのですが、この春に出た第50号には心底がっかりさせられました。第50号を記念して誌面をリニューアルしたものの、デザイン的にかなりレベルダウンしてしまったのです。
  ワイン雑誌は数あれど、『ワイナート』が頭一つ分も二つ分も抜きん出ていた理由の一つは、その優れたデザイン性にありました。アート・ディレクターは岡本一宣氏。レイアウトはシンボリックでシンメトリカル。スタイリッシュな色遣いと写真の大胆なトリミング。過剰とも言えるほどの大級数フォントへのこだわり。ワインという飲み物が持つ不思議な魅力を十分に体現してくれていたデザインでした。
  それが、どうです。第50号は凡庸で、とらえどころのない、なによりワインの持つある種スノビッシュな魅力が伝わらないデザインになってしまいました。奥付を見るに、アート・ディレクターが岡本氏から別の方に変わったようです。邪推ですけど、この方はワインを飲んでいませんね、日常的に。
  東京なら新宿の紀伊国屋とかジュンク堂のような大規模書店にバックナンバーが揃っていますから、ぜひ第49号と第50号の実物を比べてみてください。レベルダウンしたというのが決して無体な難癖ではないということがお分かりいただけるはず。
Winart (ワイナート) 2009年 03月号 [雑誌] Winart (ワイナート) 2009年 05月号 [雑誌]
  もっとも第49号の特集は「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ」、その前の第48号は「見た! シャンパーニュの未来図」。ひるがえって今50号は「ワイン講座2009開講!」で、翌51号が「かしこいワインの買い方完全マニュアル」……なるほど、雲上の話を優雅に語るよりは庶民の生活に密着した雑誌作りへという明確な編集方針の変更が見て取れます。
  でもね、『ワイナート』がフツーの雑誌になってどうする。ワインの買い方選び方なんぞは、あまたの週刊誌月刊誌その他でいくらでも特集が組まれているではないですか。
  元に戻していただきたい。……と、綴じ込みの読者アンケートはがきに熱い思いを書き記して投函しました。ま、元には戻らないんでしょうけど。