インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

歌わせたい男たち

  出張前に観た二兎社の公演。久しぶりにベニサン・ピットへ行った。
  「日本では先生が国歌を歌わないと罰を受ける」という話。チラシによればもともとこの公演はロンドンの劇場との提携公演になるはずだったのだが、このテーマがあまりにも「普遍的じゃない」として没になってしまったのだそうだ。教師に国歌斉唱を強要するなど、ウチの国ではありえないと。
【ネタバレがあります】

  思想・信条・信仰の自由を扱っていて、とても重いテーマだ。生徒と教職員全員に『君が代』を歌わせようとする校長(大谷亮介)と、不起立・不斉唱を貫く教師(近藤芳正)との対立……というと、何だかものすごくお説教くさい芝居に思えてしまうが、そこはさすが二兎社、よく作り込まれた上質の喜劇になっていた。
  主人公の音楽教師を戸田恵子が演じていた。この人はテレビで見るよりきれいだなあ(*^-^*)。シャンソンも披露していて、とても美しい声。校長の大谷亮介はラスト近くで大演説をぶつのだが、これが明らかに小泉首相のパロディで、郵政民営化の議論から最近の自民党圧勝に到るまでの流れを皮肉っていた。これは急遽演出に盛り込まれたのだろうなあ。こういう演出を楽しめるのも、ライブである芝居の魅力。
  近藤芳正の演技に何ともいえぬ味があった。左よりの思想なんだけれどそれほど過激でもなく、普通に穏便に暮らしたいんだけれど思想信条は曲げられず、妻がいて子供がいて、処分されたら困るんだけどどうしても『君が代』は歌えない……という立場の人間。もちろん芝居だから大袈裟に表現されてはいるけれど、とてもリアリティをもって感じられた。その人の背景が手に取るようにわかる演技だった。