インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「募ってはいるが募集してはいない」という発想

昨日Twitterで、こんなツイートを目にしました。毎日新聞写真部の公式アカウント(@mainichiphoto)によるものです。


▼ツイートにつけられていた写真
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スクリーンショット
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私は安倍晋三氏の政治手法に大いに疑問を持っており、一刻も早く退陣すべきだと考えている人間です。先日の「募ってはいるが募集してはいない」という珍答弁にも怒り心頭に発しました(もう何度目かしら)。でもこの毎日新聞写真部のツイートは、正直に申し上げて「卑怯」だと思います。

リンク先の毎日新聞のウェブサイトに飛んでみると、そこにはこう書かれてありました。

参院予算委員会で「桜を見る会」を巡る問題で自身の地元事務所が「功績」などと無関係に参加者を募集した疑いに関して「幅広く募ったが、募集はしていない」との前日の自身の答弁について、野党議員が追及のために準備した「募る」と書かれた資料を手にする安倍晋三首相=国会内で2020年1月29日午前11時32分、川田雅浩撮影
http://mainichi.jp/graphs/20200129/hpj/00m/010/001000g/1

スクリーンショット
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つまりこの「募る」と大書された資料は野党議員が準備して安倍氏に渡したものなのですね。野党としては「募ってはいるが募集してはいない」という日本語のおかしさを強調するために「辞書の定義をよく読んでみなさい」と皮肉も込めて作成したのでしょう。

それはいいのです。でも元のTwitterのツイートにはこう書かれていました。

自身の地元事務所が「功績」などと無関係に参加者を募集した疑いに関した前日の答弁について準備したものです。

このツイートだけを読んだ方は、この資料が安倍氏の地元事務所が準備したと読むかもしれません。あるいは「自身の地元事務所が『功績』などと無関係に参加者を募集した疑い」を長大な名詞句として捉えたとしても、てっきり官僚が安倍氏のために準備した資料と思うでしょう。私もそう思いました。

これは明らかにミスリードを誘うツイートです。実際、ツイートだけに反応して「冗談だろ」「コラ(ージュ)かと思った」などのリプライがたくさんタイムラインに流れていました。もちろんミスリードを誘う書き方を批判したリプライもありましたが。

いくら安倍氏の手法が愚劣で悪辣だとしても、こうしたフェイクニュースまがいのツイートを報道機関の公式アカウントが流すのは間違っていると私は思います。そうやって信用を失えば、徐々にその会社の報道を信じる人は減っていくでしょう。それは回り回って健全な批判精神や言論の自由をも蝕んでいくと思います(もうすでにずいぶん蝕まれているような気もしますが)。

追記

卑近な話題で恐縮なのですが、うちの学校で、課題のレポートをネット情報のコピペで作成してきた留学生がいて、担当の先生が憤慨していました。この留学生は、以前にも同じようなコピペを行って学校側から注意を受けており、私の授業でもカンニングをした「前歴」があります。

この留学生は何度注意してもこういう行為がやめられないのですが、どうもご本人はそんなに悪いことをしているとは思っていない様子です。「コピペはしているが剽窃はしていない」「見てはいるがカンニングはしていない」という感じ。上述した毎日新聞写真部のツイートも「『前日の答弁について準備した資料を手にする安倍晋三首相』とは書いているが、それを誰が準備したとか、ましてや官僚が準備したとかは書いていない」と言うのかもしれませんね。

さらに追記

今朝になって、毎日新聞写真部が訂正を出していました。