インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

節酒を続けていられる理由

今年の夏はあれこれの用事も含めて都合三週間も台湾に滞在していたのですが、最初と最後の日を除いて三週間ほとんどお酒を飲みませんでした。

根っからのお酒好きで、以前はほぼ毎日晩酌を欠かさず、ひと晩にワインを二本以上空けても(それも一人で!)平気で、あまつさえお酒に関する資格まで取ってしまった私からすれば、夏に、南の島で、明日は仕事の予定が入っていないというシチュエーションでお酒を飲まないなど、数年前までは絶対に考えられないことでした。

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https://www.irasutoya.com/2017/12/blog-post_88.html

とはいえ、こうなるまでには色々な伏線がありました。

まずは「天命を知る歳」を過ぎてからの、男性版更年期障害とでも言うべき不定愁訴です。あまりにつらいので、食生活を見直し、週に二回から三回の定期的なパーソナルトレーニングを始めました。それと同時に節酒にも取り組んでみたのです。

食事の質+量の調整と、体幹トレーニングと筋トレを中心にした運動はもう一年近く続いています。おかげでまず肩凝りが全くなくなり、次に午後の倦怠感と膨満感が薄れ、腰痛も起こりにくくなりました。全体的には以前よりとても健康になったと思います。それでも節酒だけは実現できていませんでした。

ところが。

ここ二ヶ月ほど、週末を除いてほとんどお酒を飲まないようになりました。私は昼間からお酒を飲まずにはいられないといったような「アル中」ではない(と思う)のですが、夜の食事にお酒がないのは味気なくて、以前は最低でも必ずビールは飲んでいました。「飲まないと今日の労働が報われない」とか何とか、ごたいそうなことを言って。

それがあるとき、炭酸入りの梅酒(ウメッシュ)でもほぼ満足できることを発見しました(と言うほどのことではありませんが)。さらにウメッシュは甘すぎるので、これをスパークリング・ミネラルウォーターに変え、それでもほとんど飲酒欲は消えるようになりました。

どうやら私は、炭酸の泡さえあれば、それだけで「夜の食事の味気なさ」を克服できるくらい単純な人間だったようです。別にビールじゃなくてもよかったわけです。

お酒を(ほとんど)やめて変わったこと

まず、当たり前かもしれませんが、体調がすこぶるよいです。お酒を飲んだ次の日の朝の、あの何ともどんよりとした心と身体が全くなくなりました。そして、長年(もう何十年間もです)そこはかとない痒みに苛まされ、それでも軽症なので何とか騙し騙しつきあってきたアトピーと頭皮湿疹がかなり軽快したのです。

とくに今回、三週間台湾にいるうちに、アトピーと頭皮湿疹は全くなくなりました。残念ながら東京に戻って少々「復活」してしまったのですが、なるほど私のアトピーや頭皮湿疹は、気候風土や水や食べ物、東京のストレスフルな環境、そして何よりお酒が主因だったのですね。

それともうひとつ、夜の時間が長くなりました。以前お酒を浴びるように飲んでいた頃は、飲んでしまうともう大したことはできませんでした。本を読むのも億劫だし、SNSに向かうのも危険(酔った勢いでとんでもないことや、かなり恥ずかしいことを書き込んでしまうから)。まあせいぜいマンガをぱらぱらめくるか、テレビを見る程度です。それがお酒を飲まなければまるまる読書や文章書きや家族との会話に使えるのです(この文章もお酒を飲まなかった夜に書いています)。

そして、節酒をある程度続けていると、この爽快な状態を維持したくて、お酒を飲んでしまうのが何だかもったいなく思えてくるのです。ここまで来てしまうと(習慣化してしまうと)かなり楽です。

台湾で節酒や禁酒がやりやすいわけ

台湾、それも離島にいるときはバイクのレンタルが必須です。公共交通機関が乏しいか全くないので、バイクがなければほとんど何もできません(運転手を雇うようなセレブは別ですが)。街にバイクで出て食事をしても、またバイクで宿まで帰らなければなりません。それもお酒を飲まない(飲めない)一つの理由です。飲酒運転なんて、それも人様の国で法を犯してまでなんて、論外ですからね。

それに、台湾の皆さんは夕飯時にもお酒を飲まない人が多いんです。あ、もちろん飲む人はがんがん飲むんですけど、屋台や食堂やレストランで夕飯を食べていても、よく観察してみるとお酒が並んでいないテーブルは多いです。会社の接待なんかだと別ですが(私もかつて死ぬほど飲まされました)、家族で食事されている方など、お酒を飲まない方は意外に多い。

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じゃあ何を飲んでいるのかというと、甘いお茶やジュースなんかのペットボトルを食堂の冷蔵庫から取ってきて飲んでいるんですね。台湾の食堂やレストランではこういう、飲み物はセルフサービスで取ってね、というお店が多いです。

以前は、せっかくの美味しい台湾料理なのに、あんな甘ったるい飲み物ではもったいないな、などと思っていました。それがここへ来て「これも結構アリ」に思えてきたのですから、ホントに人生、何が起こるか分かりません。

なんというかな、台湾の、それも夏のちょっとまだ昼間の暑さが残っているような、それでも夜風が心地よい夕刻に、極めてあっさり薄味の台湾料理に合わせる甘い飲み物がやけに優しくて、身体に沁みるのです。もちろん熱いお茶でもいいんですけど、ほの甘麦茶とかグァバジュースなんかがなぜか沁みるの。

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あとこれは私だけの感覚かもしれないけど、台湾のお酒屋さん(「菸酒店」といってタバコとお酒を売っている専門店みたいなの)って、ちょっと独特の雰囲気なんですよね。コンビニは別ですが、専売店は何とも形容しがたい、一種独特の不健康かつ奢侈感満載の雰囲気(失礼)があって、あまりお酒に食指が動かないのです*1

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台北・林森北路付近、酒屋さん脇の路地。「五木大学*2」とも言われるこの辺りは日本人向けの飲み屋さんが多いです。

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▲澎湖・馬公市の高級ショッピングセンター「Pier3三號港」のウィスキー売り場。免税店も兼ねているので、富裕層向け(?)かウィスキー博物館が併設されていました。

……とまあ、そんなこんなで、台湾から戻っても節酒(断酒じゃないです)生活、続いています。次なる課題は、せっかく平日は完全にお酒を断っているんだから、週末くらい……とお高いブルゴーニュあたりのプルミエ・クリュとかグラン・クリュなんかを衝動買いしそうになる欲望を抑えることです。

*1:台湾のドラマを見ていると、登場人物がお酒を飲むシーンでは「飲み過ぎに注意しましょう」的なテロップが入っていることがあります。お酒についての節制は、少なくとも政府の方針としては日本よりよほど強いものを感じます。

*2:林森だから「五木」。また五木大学で学ぼうぜ、などと誘われたりしました。今ではもう死語かしら。