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『孤独のグルメ』総集編

年末年始は、積ん読になっている本とこのときのために買いだめていたり図書館から借りてきておいたりした本を片っ端から読み、文字に疲れてきたら撮りだめておいたテレビ東京の『孤独のグルメ』総集編をちらちらと見て過ごしています。

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この時期のテレビ番組、特に大晦日と元旦はNHK民法もあまり食指が動かないものばかりですが、さすが安定のテレビ東京、大晦日には恒例の総集編を含んだ『孤独のグルメ』推しで突っ切っていました。しかも(実は録画しただけでまだ見ていないのですが)昨年のロードムービー仕立てが好評だったので、今年もまるっと同じ企画で作ったよし。へんな言い方ですが、ワンパターンっぷりに気合が入っています。

ワンパターンといえば、この『孤独のグルメ』というドラマ自体が究極のワンパターンです。なにせ主人公の井之頭五郎が冒頭にほんのちょっとだけアンティーク商としての商談をして(そのために各地を訪れるという設定ができる)、そのあとは「腹が減った」と三段階でカメラが引いていくおなじみのシーンが挟まり*1、「よし、店を探そう」と早足で歩き出す。で、偶然見つけたお店が大当たりで至福の食事をする……。毎回ほぼこのパターンです。ちょっとしたハプニングやゲスト出演者との絡みもありますが、ひたすら松重豊氏演じる井之頭五郎が食べ、脳内で独り言をつぶやき続けるというだけのドラマ。『水戸黄門』も色褪せて見えるほどのワンパターンに徹しています。

いまどきお店を探すのにスマホを使わず、ネットの★やクチコミも参照せず、それでいて毎回毎回飛び込んでみたお店が「あたり」だなんて、そんなのありえないよ〜、オレなんかかなりの確率で「はずれ」を引いてるよ〜、と思えるくらいのファンタジーなのですが、そこがいいんですね。それこそ『水戸黄門』と同じで、その安定の展開に安心して見ていられる。おいしそうな料理にただただ垂涎していればいい。

ドラマの冒頭に毎回「誰にも邪魔されず気をつかわずものを食べるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた最高の癒やしと言えるのである」というナレーションが入りますが、そう、このドラマは「癒やし」みたいなものなのかもしれません。

ワンパターンといえば、このドラマのBGMもこれまたワンパターンで好きです。「よし、店を探そう」のときは、細かくリズムを刻まれるギターのリフにサックスの主旋律が入る「探偵もの」っぽい雰囲気の音楽。お店を見つけて店内に入ったときは、恐る恐る探索している風なマリンバの調べ。食べ終わりのラストスパートは、ロックンロール風のイケイケでにぎやかな曲。そして「うまかった〜!」とお店を出て主人公が去っていくエンディングは、「♪ゴロ~、ゴロ~、イ・ノ・カシラ」というムーディなコーラス。この変わらなさゆえに、毎回そこだけがちがう各店の美味しい料理が際立ち、こちらに迫ってくるという構造になっているのです。なんと巧みなことか。たしかに癒やされるわ〜。

*1:このカットはとても印象深いためか、中国のYouTuberが引用しているのを見たことがあります。