きのう晩ごはんを作りながらNHKのニュースを見ていたら、西日本での豪雨被害を伝えるところで「法面」が出てきました。「ほうめん」じゃなくて「のりめん」。人工的に造成された斜面のことを指します。私はむかしむかし、この言葉を土木工事や砂防関係の現場で通訳の仕事をしていたときに知りました。
気になったのは画面のテロップが「のり面」と、いわゆる交ぜ書きになっていたことです。私はかねてから「ら致」だの「まん延」だの「ひっ迫」だの「改ざん」だのといった交ぜ書きがどうにも気持ち悪くて仕方がないのですが、「改竄」はまだしも「法面」くらいすべて漢字で表記してもいいじゃない、「法」という漢字は難しくもなんともないでしょ、と思いました。
こちらはNHKの画面じゃないですけど、ニュースの文章と画面のテロップいずれも「のり面」と表記されています。
ちょっとネットで検索してみたら、違うパターンもありました。こちらはニュースの文章では「法面」を使い、画面のテロップでは「斜面」を使っています。なるほど、法面も斜面の一種ですから、テロップは一般的に馴染みが深いと思われる「斜面」を使ったのでしょうか。
法面は人工的に造成された斜面というのがその本義ですから、自然災害の土砂崩れなどが起こる斜面と、人工物が破壊されたというニュアンスを持つ法面とはきちんと使い分けたいというのが報道各社のスタンスなんでしょうね。でも、だったら法面は法面と表記すればいいのに。「のうめん」と読んじゃう人がいても、アナウンサーが「のりめん」と発音することで「ああ、これは『のりめん』と読むのね」と学びになればいいじゃない。あるいは新聞なら、ルビをふればいいじゃない。
どうして「法面」を「のり面」と書くのかについては、こちらのツイートを見つけました。
新聞に時々出てくる言葉で、最初は面食らうかもしれないのが「のり面」。漢字で書くと「法面」ですが、常用漢字表で「法」に「のり」の読みがないため、この表記になります。人工で造成された、盛り土や切り土などの斜面のことです。〔の〕
— 毎日新聞 校閲センター (@mainichi_kotoba) June 10, 2011
あああ、なんだか情けない気持ちになります。交ぜ書きについては故・井上ひさし氏をはじめとして多くの方が異を唱え続けていまに至っていますが、一部のマスメディアを除いては一向に改まる気配がありません。こんな読み手をばかにしたような表記の仕方に対して「常用漢字表で『法』に『のり』の読みがないため、この表記になります」だなんて唯々諾々とお上に従うのではなく、まず報道各社から率先して「おかしい」と声を上げ、改めようと呼びかけましょうよ。社会の木鐸を自認なさっているんでしょう? 世の人を教え導くどころか、愚民化の流れに棹さしちゃってどうするんです。