インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

『ブラタモリ』の解説者の話し方

昨晩NHKの『ブラタモリ』を見ていたら、今回は信州・松本の回でした。松本は勤務先の「遠足」で何度か行ったことがありますが、いつも松本城だけ“走馬觀花(ざっと見るだけ)”なので、興味深く見ました。いつかもっとゆっくりと観光してみたいです。

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この回に限らないのですが、『ブラタモリ』では解説者として登場される学者や学芸員自治体の職員や教育委員会の委員などのみなさんが、とても話し上手だなと思います。声が明瞭で、滑舌ははっきりとしていますし、「えーと」や「あのー」といった冗語も少ないですし、なにより論旨が明快で分かりやすい。曖昧な、あるいは身内に媚びたような(内輪受けとか、業界用語を使うとか)不親切な話し方をしないのです。

番組全体の構成を見ていると、さすがNHKといいますか、街に隠された秘密を「ぶらぶら歩いて解き明かす」というコンセプトとはいささか趣きがちがい、事前に入念なプロットを組み立て、様々な演出を作り込んでいることが分かります。でも、タモリ氏のようなプロのタレントさんはまだしも、テレビ番組への出演ということでは素人である地元の解説者のみなさんが、そういう作り込んだ時にありがちな、原稿を読み上げるような生硬さがまったくなく、自分の言葉でわかりやすく解説するのに毎回驚嘆しています。

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もちろん解説者のみなさんは、ご自身の専門分野について話すのですから、それを語る語彙や表現については人一倍豊富であることは想像に難くありません。また学校の先生や学芸員といった、日頃から多くの人に向かって話をすることに慣れている方も多いのだろうとは思います。

それでも全国に流れるこの人気番組に、その日限りのロケで出演して、ここまでわかりやすく、そつなく、そして時にはユーモアを交え、タモリ氏などのアドリブ的ツッコミにもちゃんと対応している。編集段階で放送として流されなかった「カット」部分もあって、そこでは言い間違いなどもしているのかもしれません。でもやっぱり「上手だなあ」といつも思うのです。

翻って自分を考えてみれば、自分だって人前で話すことを仕事にしてもう何十年にもなるのに、いまだに話し方が上手くありません。上述したような素晴らしい話し方の真逆、つまり、声が不明瞭で、滑舌が悪く、冗語が多く、論旨が曖昧で、ジャーゴン(業界の身内だけが分かるような言葉)にも頼っているような気がします。オンライン授業などで、ときどき動画を撮って配信することがあるのですが、あとからそうした動画を見て、幻滅することしきりです。

それともうひとつ、話し方には、声の良し悪しとか冗語の多寡とか論旨の巧拙とかのほかに、何かこう、その人の「人となり」が大きく影響しているようにも思えます。自分のことを棚に上げて他人を観察してみれば、言語を問わず、人となりがすっと心地よく懐に入ってくるような話し方ができる人と、そうでない人がいる。

それは言葉遣いの硬軟とはまた違うところで成り立っていて、ぶっきらぼうな言い方であっても「なんだかこの人は憎めないな」と思わせるものがあったり、とつとつとした語り方であっても「なんだか心地良いな」と思えることがあったりと、話し方を含めたその人全体の佇まいに起因するような感じ。ちょっと誤解を招くかもしれませんが、俗に言う「人たらし」とはこういう話し方ができる人なんじゃないかと。

こうなるともう、一朝一夕に改善したり取り繕ったりできるものじゃないですね。NHKの『ブラタモリ』で毎回登場する解説者の方々の話し方、そしてその佇まいを見ていて、ああいいなあと毎回感じているのです。というか、番組を制作する段階でそういう人を慎重に選び、いろいろなアドバイスもされているのかもしれないですけど。