インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

傘の柄は手首の外側から掛ける?

先日、ネットで何かの検索をしている折に、偶然こちらの記事を読みました。「育ちがいい人」というタイトルの記事なのに、冒頭から「婚活成功者続出!難関幼稚園、名門小学校合格率95%!」という、およそ育ちがいい人なら自ら感嘆符つきで言わないであろう類のフレーズが踊っていたので、興味を惹かれたのです。

diamond.jp

一時期、大いなるトンデモと有名になった「江戸しぐさ」の「傘かしげ」を、「昔から日本人が当たり前にしている気遣い」と引いている時点で少々身構えてしまうこの記事では、さらに雨の日のマナーとして、たたんだ傘の柄を腕に掛けるときは手首の外側から掛けるのが「育ちがいい」人だとおっしゃいます。

なるほど、傘の柄を手首の外側からかければ、傘の先端が自分の側に少し寄るので、しずくを他人にかけてしまう可能性が減るというわけですね。これはたしかにエレガントかもしれないというわけで、育ちがあまりよいとは言えない私も実践してみました。……が、傘の先が足に当たりまくって歩きにくいです。足に当たらないようにするには腕を常に身体から微妙に離して上げておく必要があり、やたら腕が疲れます。

梅雨に入って駅のホームなどで数日間観察してみたところ、傘の柄をこうやって腕の外から掛けている方はお見かけしませんでした。それだけ「育ちがいい」人が少ないのかしら。いえいえ、みなさん歩きにくいし疲れるから自然にそうなってるんでしょう。

この本では「普段の生活の中で『育ち』が出てしまうポイントや、どうふるまうのが正解か? というリアルな例を250個も紹介してい」るそうで、もちろんそれらに取り組むかどうかは個々人の自由ですけど、だからって「あっ、あの人はこのポイント通りやっていないから育ちが悪い!」などとチェックするのは、いかにも育ちが悪そうな行為ですのでやめましょうね。

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https://www.irasutoya.com/2019/08/blog-post_971.html

あ、でも、この傘の柄の話で思い出したのが、かつてワインスクールで教わった「スワリング」のマナーです。スワリングというのは、ワインを飲む時にグラスをくる〜りと回す、アレです。回すことでワインがグラスの内壁に薄くつき、それが揮発することで香りが引き出され、よりワインを楽しめる(ただしクリスタルガラスのちゃんとしたワイングラスじゃないと、あんまり意味ないらしい)という。

このスワリング、回す方向は自分の外側から内側へが「エレガント」だと教わりました。内側から外側に回すと、勢い余って他人にワインをかけてしまう可能性があるからだそうで。まあ実際にはワイングラスからワインが飛び出るほど勢いよくスワリングしちゃったら、その時点でエレガントもへったくれもないんですけど、確かにこれは合理的な配慮ではあるかなと思います。

でもこれも「あっ、あの人は内側から外側にくるくる回しているから育ちが悪い!」などとチェックするのはやめましょうねえ。ワインはもっともっと自由に楽しんでいいのです。ともあれ「傘の柄は手首の外側から掛ける」というの、他人への細やかな配慮という点ではスワリングと同じで素敵だなと思うものの、それを「育ち」という言葉で戒めちゃうのが素敵じゃないなと思ったのでした。