インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

紙とハンコだらけの国で留学生に申し訳ない

ふだんから留学生のみなさんと接していると、時々とても申し訳ないというか、恥ずかしい気持ちになることがあります。それは例えば、この国の諸手続きの、あまりにも時代遅れなあり方についてです。

例えば新入生は学校から「学生カード」のようなものに記入するよう求められます。これは在学中に学籍を管理したり、進路相談に応じたりするときに使われるものなのですが、これが何と今どき「手書き」。だいたい入試を受ける段階ですでに願書を提出しているのですから、あらかたの項目についてはすでに学校のパソコンに登録されているはず。そのデータを使って学籍を管理すれば済む話で、住所など更新された部分があれば、それも端末から訂正すればよく、紙の資料にする必要はあるのだろうかと思います。

しかしうちの学校は、その入試の願書からして手書きを求めています。いえ、うちの学校だけではないかもしれません。きっとまだ多くの学校で願書から学籍簿から、ありとあらゆる資料が紙での提出が求められているのでしょう。しかし時代が時代ですから学籍管理のシステムくらいはすでに学校に備わっています。つまり、学校はその紙で提出された資料を、事務局の職員が手作業で一つ一つパソコンに入力しているのです。あまり効率的ではないですよね。

さらにうちの学校は、学籍簿に写真を添付するよう求めています。スマホでも簡単にデジタルの写真が撮れる時代に、証明写真をわざわざ撮り、学籍簿に定められた写真添付欄の大きさにチョキチョキ切り、裏に糊をつけて添付するのです。これらすべてを(これにとどまりませんが)毎年何十人何百人という留学生に求め、担任の教師が回収し、あるいは書類の不備をチェックし、写真の糊が剥がれていた場合には「しょうがないなあ」ってんで、もう一度貼り直してあげる……そんな光景が繰り広げられています。

また留学生のみなさんは、ときにビザの更新や就職活動の面接などで授業を休むことがあります。その際にはあらかじめ「公欠届」というものを提出しなければなりません。もちろん単なる欠席とは違うので届け出なり申請なりが必要なことは分かりますが、例えば面接ともなると、訪問先の担当者にサインとハンコをもらい、それをまた担任の教師のところに持っていって承認のハンコをもらい……などということが2020年の現在でも行われています。以前はさらに主任のハンコをもらう欄もあったのですが、これはさすがに廃止になりました。

私もクラス担任を仰せつかることがあるのですが、そうやって担任として留学生にあれやこれやの非効率な事務手続きを支持するたびに、本当に気が滅入ります。そして「日本はとても珍しい習慣が残っているんですね」という顔つきで、しかし律儀に「センセ、ハンコください」と教員室にやってくる留学生のみなさんに申し訳なく思うのです。

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https://www.irasutoya.com/2018/12/blog-post_822.html

うちの学校もさすがにこのままではいけないと、新しい学籍システムが今春から稼働しています。まだ本格稼働ではないので上述したような非効率はそのまま残されていますが、数年のうちには改善していくものと期待しています。数年じゃなくて今すぐ改善してほしいですけど、そこはそれ、学校の規模も大きいので。ま、このスピードも留学生のみなさんから見れば「牧歌的だなあ……」ということになるのかもしれませんが。

toyokeizai.net

昨日、ネットでこの記事を読みました。日本人の労働生産性OECD諸国の中でも際立って低いというのはもう長らく言われていることですけど、今次のコロナ禍を経てさえこのありさまでは、夏目漱石の『三四郎』に出てくる広田先生じゃありませんが「滅びるね」というネガティブな言葉も吐きたくなろうというものです。

ともあれ、紙の資料もハンコも、そしてFAXも……こうした「日本文化」が、留学生のみなさん、それもお若いみなさんから見れば、すでに「センセも大変ですね」と半ば憐れみと同情をもって受け止められるものであるというのを、私は現場で日々感じています。私を含め、日本よ、もうそろそろ変わって行きましょうよ。

……というわけで、まずは隗より始めよ。私は自分の「お薬手帳」をスマホアプリにしました。かかりつけ薬局も、服用中の薬剤の情報も、服用方法の指示もすべて呼び出せて便利です。とはいえ、病院や薬局ではいまだに診察明細書も領収証も次回予約票も保険調剤明細書も薬剤解説書も、み〜んな紙にプリントアウトして渡してくださるんですけどね。

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