インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

選挙の常識をくつがえすチラシ

ただいま統一地方選挙の真っ最中で、私が住んでいる東京都世田谷区でも区長選挙と区議会議員選挙が行われます。私は選挙公報や「選挙ドットコム」などのボートマッチ(vote match)を使って、候補者の政見や政策、人柄などを見比べながら、誰に投票するかを検討しています。

この時期は自宅のポストに投げ込みのチラシも入ることがあるのですが、今回は区長選挙に立候補しているお二人のチラシが入っていました。世田谷区長は、4選を目指す現職と自民党日本維新の会などが応援する新人の「一騎打ち」なのですが、そのチラシが非常に興味深いものでした。

今回の区長選挙では、老朽化した世田谷区役所の建て替えが一番大きな争点になっているようで(区民の一人としてはなんだかなあ……という感じではありますが)両候補ともチラシではその点に大きく紙面を割いています。しかし一番興味深いのは、現職の保坂展人候補に挑む新人候補のお名前がチラシに一切載っておらず、ただ「史上最年少区長候補」とだけ書かれていることです。このような政治チラシには初めてお目にかかりました。


保坂展人氏のチラシ



▲「史上最年少区長候補」氏のチラシ

ネットで検索してみると、この「史上最年少区長候補」は元財務省職員の内藤勇耶氏。内藤氏が出馬表明したのは先々月の19日だそうです。このチラシがうちのポストに入っていたのは昨日ですから、ちょうど2ヶ月経っているわけですが、にもかかわらずチラシに名前が入らず、人物のシルエットだけというのはどういう経緯によるものなのでしょうか。選挙といえばとにもかくにも候補者の名前を連呼して有権者に刷り込むのが常道というわたしたちの常識を、軽々と超えていくようなある種奇妙な爽やかささえ感じます。

www.tokyo-np.co.jp

私は現時点でどちらに投票するか、まだ決めていません。また首長の多選はどちらかというとあまり良くない、できるだけ若い人たちへ政治を渡していくべきだとも考えています。しかしこのチラシから私が受け止めたのは、どんな人物かはどうでもいいから自民党日本維新の会が推薦する候補ということで、ひとつよろしく……というメッセージでした。党利党略のみで政治を行いますよ、地方自治も結局は国政政党の傀儡ですよと宣言しているようなものですし、有権者の一人としてはちょっとバカにされているようで、あまり気分がよろしくありません。

いったい誰がどういうおつもりで、このチラシを制作して配ることを良しとされたのか、その理路にとても興味があります。