インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

そのバイタリティがすごい

きのう職場に、中国の方から電話がかかってきました。うちの職場は地域の自治体から委託を受けて、その地域に在住ないしは在職している外国人のために日本語教室を開いています。そのお問い合わせの電話でした。

この日本語教室は参加費の一部を自治体が負担するーーつまりとても安価なので人気があり、新学期を控えたこの時期は問い合わせがたくさん入ります。ただしごくごく初級のレベルしか開講しておらず、定員も限られているため、電話で担当講師がレベルチェックを行って、ある程度話せる方は残念ながらお断りをすることになります。

ところで、きのう電話をかけてこられた中国の方は、まったく日本語が話せませんでした。最初に電話をとった日本語クラスの担当者は、英語は話せるけど中国語は話せないので困ってしまって、それで私に回ってきたのです。その方と日本語クラスの担当者の間に入って私がいろいろと話して、無事にクラスに参加できる運びになって(初級も初級、ゼロレベルですもんね)、手続きを終えました。電話を切ってから私は「この方、いろいろな意味ですごいなあ」と思いました。

この中国の方はご年配の男性で、投資ビザで来日して日本で商売をされているそうです。まったく日本語が話せないのに日本でビジネスをやろうとされることがまずすごいですし(おそらく周囲には話せるスタッフがいるのでしょうけど)、そのうえで日本語を学ぼうと思い立って自治体のこの教室を見つけ、自分で電話をかけてきたというのもすごいです。

最初に電話を受けた担当者によると、この方は初手からすべて中国語で話してきたそうです。「こんにちは」も「ハロー」もなく、最初からとにかく中国語だったと。日本で日本人に電話をかけるのに、日本語も英語もまったく話せないというのに、この度胸。電話を受けた側からすればいささか迷惑ではありますし、なぜ中国語のみで通じると思ったのかも謎ですが、そのチャレンジ精神がすごい。なんてポジティブなんだ……と思うわけです。私だったら怖くてとてもかけられないです。


https://www.irasutoya.com/2016/03/blog-post_95.html

実は私が中国語で対応して、一通り説明が終わってからも、なおも「あんた、中国語はどこで学んだの? 留学? どこの大学で?」などと世間話がしばらく続きました。とにかくすごく明るくて、前向きで、コミュニケーションを取ろうとする姿勢に迷いがないのです。ちょっと無鉄砲すぎではありますけど。

折しもきのう、オンライン英会話の講師から“Your English is better than you tell yourself.”と言われたところでした。おそらく「私の英語はまだまだ拙くて〜」みたいなことばかり私が言っていたからでしょうね。おのれのネガティブさと、あの中国のおじさんのポジティブさ。そのコントラストが痛いくらいに眩しいです。あのくらいのバイタリティがなければ海外で商売なんかできないんだろうなと、私は変に感心してしまったのでした。