インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

「何かあったのか劇場」について

私の妻は大相撲のファンで、場所中、特に週末の夕刻はチューハイを飲みながらテレビで観戦するのが好きという、まるで昭和のオヤジのような人です。その彼女がもうひとつ好きなのが「笑点」。この番組は毎週日曜日の午後5時半から30分間なので、ちょうど大相撲の大一番と重なることが多く、いつもどっちを見るかで呻吟しています。私はどちらにもそこまでの興味はないので、テレビ音声をBGM代わりに夕飯を作っています。

あまり興味がないなら黙っとけばいいんですけど、いつも妻と「あれはちょっとどうかなあ」と意見が一致するので記しておきます。それは「笑点」で林家たい平氏がちょくちょく披露する「何かあったのか劇場」についてです。

みなさまご案内の通り「何かあったのか劇場」とは、林家たい平氏が大喜利で司会の春風亭昇太氏をイジる回答のことです。通常大喜利の回答は短くスパッと繰り出されるものが多いのですが、この「何かあったのか劇場」バージョンの回答はけっこう長くて10数秒ほど続きます。

内容はといえば、3年ほど前に結婚された春風亭昇太氏とそのお連れ合いの「不仲」をネタにした一種のギャグです(実際には不仲じゃないので、昇太氏が「んなことないよっ!」と混ぜっ返すのまでを含めたギャグですね)。ただ、お題への回答に絡めて「劇場」にもつれ込むという技はあるものの、基本的に「人んちの不幸」をネタにしているわけで、気脈の通じた落語家さん同士の内輪受けであるとはいっても、聞いている方はあまり気持ちいいものではありません。少なくとも私はちょっと笑えません。

笑点」の大喜利は、毒にも薬にもならない回答が一種の俳諧味を醸し出し、それが日頃の疲れを癒やしている日曜夕刻のお茶の間にユルい空気を運んでくる、そこに大きな魅力があるんじゃないですか(これでもホメてます)。だから、なんだかんだでここまでの長寿番組になっているのではないかと。

林家三平氏が降板し、桂宮治氏が新メンバーとなり、三遊亭円楽氏が病に倒れたあとの席を実力どころの噺家さんたちが交代で「助っ人」に入るなど、いろいろと試行錯誤を続けている「笑点」。その中で新しい試みをと取り組まれているのは分かるのですが、いかんせん「何かあったのか劇場」は大喜利の空気の中で空回りをしているように感じられます。

あれはもうそろそろお止めになったほうがいいのではないかと思います。「野暮なことぬかすんじゃないよ」と言われそうですけど……。


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