インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

未払い残業代

昨日夕飯を作りながらBS-TBSの『報道1930』を見ていたら、日本ではいまだに労働法制を守らない企業が多すぎるという話をしていました。残業代の未払いが現在でも当たり前に見られるなどという状況は、いわゆる先進国では到底ありえないことだと。

ご多分に漏れず、実はうちの職場でも過去の残業代についての見直し、というか検証がありました。

コロナ禍に突入してからのこの数年間、勤務形態が劇的に変化しました。うちの職場は典型的な「9時5時」の8時間勤務が基本ですが、コロナ禍以降は在宅勤務や時差出勤、それに何よりオンライン授業への対応等で残業や早出が増えました。

恐らくは、然るべき方面からそうした勤務に対して残業代なり超過勤務手当なりが出ていないのは問題ではないかという指摘があったのでしょう。数ヶ月前、職場の人事厚生部門から突然「過去の残業代を精算します」という通知が来ました。

人事厚生部門からは過去のおよそ3年半分にわたる全日程のエクセルファイル(月別に組まれたシートがおよそ40枚、入力すべきセルがおよそ4000以上という膨大なものです)が送られてきて、そこにすべての出勤日の出勤時間と退勤時間を書くように求められました。それに従って過去の残業代を精算しますと。


https://www.irasutoya.com/2015/10/blog-post_205.html

ちょっと意地悪な見方をすれば、これだけの煩雑な作業を課すことで未払い残業代をあきらめさせようという意図なのではないかと勘ぐりたくなるほどです。実際、同僚の中には、過ぎたことについてはもうこだわっていないし、それでなくてもいま現在の仕事が忙しいし、そんな煩雑な作業はできない、よって、全日程そのまま「9時5時」のコピペで出すという人もいました。

でも私は悔しいので、人事厚生部門にこれまでの自分の勤務状況についてのデータを照会し、それと自分のGoogle Calendarや過去の仕事の記録や同僚の記憶や……それらすべてを突き合わせるという膨大な作業をやって、エクセルに入力し、提出しました。それはもう、ぐったりと疲れました。

それから数ヶ月。先日人事厚生部門から残業代の精算時期を延期させてほしいというメールが来ました。おそらくは私のように「悔しい」と考えて一所懸命に過去の自分の勤務記録を調べて膨大な入力を行い、提出した人が予想外に多かったのでしょう。処理や精査にあたる現場の人はてんてこまいなのではないかとお察しします。

労働法制を遵守しようという姿勢にはもちろん大賛成です。でも今回のようなやり方が、いかに職員の業務に対する熱意を削ぐかということを経営陣は想像してほしいと思います。そしてまた、これだけの煩雑な作業を少なからぬ職員に課したことで、本来の業務にどれだけ支障が出たのかについても。