インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

瞑想みたいな筋トレ

コロナ禍三年目の夏もどこにも行けないので、八月は筋トレの「強化月間」と位置づけて一か月が経ちました。私の場合筋トレは、筋肉をつけるためというよりは腰痛予防と男性版更年期障害とでも言えそうな不定愁訴の解消が目的です。八月は勤務先の授業がほぼなくなるので、その分時間の都合がつけやすく、いつもよりゆったりとジムで過ごしました。

ジムというところは「しんどいこと」をするところ、自分を追い込むところというイメージがあります。でもこの夏、いつもより時間を使いながらトレーニングをするなかで、そうではない別の感情が湧き上がってくるのを発見しました。ゆっくり自分の身体と対話するようなトレーニングが、とても楽しかったのです。これは瞑想に近いんじゃないかとさえ思いました。

いつもは早朝に、出勤時間を気にしながらトレーニングをしているので、なんとなく慌ただしい気持ちが自分のなかにあります。でもこのひと月間は少し遅めに職場に出てもだいじょうぶだったので、モーニング会員としていられる時間ギリギリまでジムにいて、その分ふだんよりもペースを落としてトレーニングすることができました。

別に通っているパーソナルトレーニングのジムで、トレーナーさんにその状況も伝えたところ「それなら、こうしてみてください」というメニューの組み合わせを教わりました。鍛える部位を分散させる(同じ部位ばかりに負荷をかけない)この組み合わせは、「業界」ではとてもスタンダードなものなのだそうです。

1.胸と上腕三頭筋(腕の後ろ側)
2.背中と上腕二頭筋(腕の前側)
3.肩と下半身
プラス毎日有酸素運動トレッドミルでのジョギング)

ゆっくり(しかし負荷はあまり落とさず)トレーニングしているうちに、いまどこを鍛えているのか、どこに効いているのかがはっきりと分かるようになってきました。筋トレのメニューは、きわめて科学的というか物理的な法則に則っているので、正しくトレーニングすればきちんと効果が出ます(逆に正しくやらないと、ほぼ疲れるだけで終わります)。ゆっくり、ひとつひとつ確かめるようにトレーニングしたあとは、狙った部分がきちんとパンプアップしているので、充実感や達成感があります。

それ以上に大きな気づきは、ゆっくり・じっくり取り組むことで、ジムにありがちな周囲の人たちに心乱されることが少なくなったという点です。そう、ご案内のとおり、ジムという場所は老若男女を問わずマナーの悪い方が必ずいるものです。試しに「ジム マナー」で検索をしてみたら、マナーの悪さについて書かれたサイトがものすごくたくさん見つかります。みなさん内心はけっこうイライラしながらトレーニングしてらっしゃるのかしら。

しかも不思議なもので、出勤時間を気にしながら何となく気ぜわしくトレーニングをしていると、それだけ周りのマナーの悪さにも心を持って行かれるみたいなんですね。余裕のなさがネガティブな現象を呼び込む、みたいな。それがゆっくりとトレーニングすることで、自分の意識を深く沈降させていくような気持ちになれることに気づきました。より深く集中できるようになり、そのぶん周りの人々の存在が意識から遠ざかっていくような感じ。瞑想に近いと申し上げるゆえんです。


https://www.irasutoya.com/2016/07/blog-post.html

そうやって一ヶ月間取り組んできたおかげで、このひと月の間にも少しだけ体重が増えました。私はもともと運動がとても苦手な人間で、筋トレもダイエットのためではなく、腰痛をはじめとする身体の不調を起こさないよう体幹を中心にもう少し「たくましく」なることが目的なので、これはこれでいいのです。

でも、筋トレしてどうせ筋肉がつくなら、いわゆる「細マッチョ」みたいなのがいいなと思っていたのに、気がついたらなんだか「ゴリマッチョ」に近づきつつあるようです。手持ちの服が着られなくなるのは困るので、強化月間が終わったら、またほどほどにしておこうと思います。ただ、瞑想に近いマインドセットの持ち方を、あの無機質極まりないジムで会得できたのは、思わぬ余禄でした。なかなか充実した夏だったと思います。