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フィンランド語 179 …分格が主語のとき動詞は三人称単数形になる

Duolingoでフィンランド語を学んでいて、“Five wild owls are saying hoot.”を“Viisi villiä pöllöä sanovat huhuu.”と訳したら、「間違い!」と言われました。正しくは“Viisi villiä pöllöä sanoo huhuu.”、つまり、動詞は私が使った三人称複数形の“sanovat”ではなく、三人称単数形の“sanoo”だというわけです。

五羽の野生のフクロウが「ホーホー」と鳴いています。
✗ Viisi villiä pöllöä sanovat huhuu.
○ Viisi villiä pöllöä sanoo huhuu.

ええ〜、どうして? 五羽のフクロウだから複数いるわけで、だから複数形の“sanovat”をわざわざ使ったのに、なぜ単数形の“sanoo”になるの? ……と思いましたが、ここでフィンランド語教室の先生がおっしゃっていたことを思い出しました。

分格が主語になると動詞の人称は三人称単数形になる。

“villi pöllö(野生のフクロウ)”は“Viisi(五)”という数詞にくっついているので、分格の“villiä pöllöä”になる必要があります。そしてそれが主語になっているので、動詞の人称は三人称単数形になると。なるほど。

Duolingoにはそれぞれのタスクにコメント欄がついていて、それは右下の「吹き出し」アイコンをクリックすると読むことができます。試しにこのタスクでアイコンをクリックしてみたら、案の定多くのフィンランド語非母語話者の学習者が「どうして“sanovat”じゃなくて“sanoo”なの?」と私と同じような疑問を呈していました。

このスレッドを読んでみると、フィンランド語の母語話者的には“Viisi villiä pöllöä sanovat”でも通じないことはないけれど、やっぱり分格が主語の場合は三人称単数形の“sanoo”だということ、そして三人称複数の“sanovat”を使うとすれば、それは主語が複数主格の“pöllöt(すべてのフクロウ)”のときだということがわかります。

とくに“Taurelve”氏がおっしゃっていることがおもしろいですね。もともとフィンランド語の動詞は、三人称の単数も複数も語幹のみで語尾がなく、“pöllö istu(単数)”、“pöllöt istu(複数)”だったと。でも形容詞的に働く分詞語尾“-vA”(〜している〜:ここでは「座っているフクロウ」)があって、しかも形容詞はそれが修飾する名詞と格や単複を一致させる必要があるので、このようになると。

istuva pöllö:単数主格
istuvat pöllöt:複数主格
istuvaa pöllöä:単数分格
istuvia pöllöjä:複数分格

そしてこの二行目の、複数主格に使われた分詞語尾“-vat”がのちのち動詞の三人称複数語尾として使われるようになったというのです。おお、勉強になります。これはフィンランド語の歴史を反映しているのですね。

ところでいま、教科書の本文を復習しながら暗記していて、同じような「分格が主語」の文はいくつも登場しています。

Ennen Jokeloita, siinä asui opiskelijoita.
ヨケラさん一家の前には、そこに学生たちが住んでいました。
Niitä tulee televisiosta aivan liian paljon.
それらはまさに、あまりにもたくさんテレビで放映されています。

いずれも複数分格の“opiskelijoita(学生たち)”と“niitä(それら)”が主語になっていて、動詞は“asui”と“tulee”で三人称単数形です。なるほど〜。この文法事項、もう忘れません。