インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

このテーブルで飲食ができます

先日、六本木にある国立新美術館へ行って、一階にあるセルフサービスのカフェテリアでサンドイッチとコーヒーを買いました。窓際にあるテーブルまで持っていって座ったら、そのテーブルにこんな表示がありました。

「このテーブルで飲食ができます」。一瞬どういう意味なのかよく飲み込めなかったのですが、おそらく館内にある他の場所では飲食禁止だけれども、ここではいいですよということを伝えたいのでしょう。セルフサービスのカフェテリアにあるテーブルなんだから、そもそもこの表示は必要なんだろうかという疑問はさておき、おもしろいなと思ったのは中国語の表記(英語も)です。

“你可以吃喝”。あなたは飲食ができます(英語もそういう意味ですね。韓国語は読めないのでよくわかりませんが)。確かにその通りといえばそうなのですが、個人的な語感ではこの中国語、なかなかに「粗野」な感じがいたします。もちろん非母語話者の貧弱な語感ですからあまり自信はありませんけど、これだといきなり「あんたは飲み食いできるよ」と言われているようで、だから何なんだという感じで。ほとんど言いがかりに聞こえるかもしれませんけど。

「このテーブルで飲食ができます」ということは、このテーブルは飲食用に使ってもらってもいいですよ、ってことを伝えたいんですよね。だったらたとえば“可供用餐”とか“供您用餐”とか書いたほうが多少は上品じゃないかなあと思ってしまいました。少なくとも“吃喝”じゃなくて“飲食”を使うとか。母語話者のご意見をうかがってみたいところです。

でもそもそも、こういう表示や注意書きが必要かという視点もありますよね。表示の上にハンバーガーとコーラみたいなピクトグラムがありますけど、文字はいっさい廃してこれだけでもいいような気がします。えっ……どうでもいい? でも私は、日本の公共空間にこうした注意書き系統の文字が多すぎるのがとても嫌いなので、ついつい気になってしまったのです。