インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

ノンアルコールビールを飲むということ

お酒を飲まなくなってから50日ほど。いまでもスーパーのお酒売り場を通りかかると、ついフラフラと引き寄せられそうになることはありますが、もう以前のように飲みたい、飲まずにはいられないという状態には陥らなくなりました。自分ではそうではないと思っていましたけど、やっぱり若干依存症の傾向はあったのでしょう。それでもこうやって意外なほどあっさり断酒できちゃいましたから、その点ではごく軽い依存症のレベルで済んでいたということなのかもしれません。

それでも時々、とくに夕飯時に飲みたくなることはあって、そんなときはノンアルコールビールを飲んでいます。ご案内の通り大手酒造メーカーのノンアルコールビールは(と一般化してしまうとメーカーさんには申し訳ないですが)、正直に申し上げてあまりおいしくないです。どうしてもノンアルコールビール特有の味や香りがあり、それに泡立ちもかなり弱くて、ビールと呼ぶにはちょっと……というものがいまのところほとんどです。

脱アルコールや「ソバーキュリアス」の流れはけっこう世界的に広まっているようで、日本製のほかに海外でもたくさんのノンアルコールビールが販売されています。日本国内でも、大手メーカーだけでなく、いわゆるクラフトビール地ビール的に作るところも増えつつあるとか。

そんな様々なノンアルコール飲料を販売されている「maruku」さんで、ノンアルコールビールのアソートを買ってみました。様々なメーカーのノンアルコールビールが10種類2本ずつ、合計20本入ったアソートです。荷物が届いて箱を開けてみると、こんなかんじで「うわ〜っ」と盛り上がります。

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それで少しずつ飲んでは自分の好みに合うノンアルコールビールがないかなと探しているのですが……、ここにきて自分のなかに、なんだか身も蓋もない疑問がわきあがってきてしまいました。

果たして私は、ビール風味の飲料を本当に飲みたいと思っているのでしょうか。

私は体質的にはおそらくアルコールを飲めるタイプです。だからお酒の味や香り自体が苦手とか、体質的にアルコールを飲めないという方とは違って、限りなくビールに近づけた飲料をそれなりに楽しく飲めるはず。でも、せっかくお酒をやめて「しらふでいることへの興味」が増したのに、なぜお酒の味や香りにこだわらなくてはいけないのかと。もっと自由に料理に合う飲み物を探してもいいはずです。

数年前のフィンランドで、レストランのノンアルコールペアリングを試して以来、お酒的な発想とはまったく異なる食中楽しめる飲み物を探してきました。でもそれらは往々にして甘すぎたり、力強さに欠けたりして、結局はアルコールがもたらしてくれる様々な刺激に舞い戻っていたのです。

qianchong.hatenablog.com

でも今回、なんだか憑き物が落ちるようにお酒をやめることができたのですから、これを期にもう一度いろいろと追求してみようという気持ちが沸き上がってきました。

先日読んだ『ゲコノミクス』という本では、著者の藤野英人*1が、下戸にとってレストランなどでノンアルコール飲料の選択肢があまりにも貧弱すぎる、でも飲料メーカーにとってはほぼ未開拓のブルーオーシャンであるという趣旨のことをおっしゃっていました。

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ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!

最近になってスーパーや酒屋さんなどでのノンアルコール飲料の選択肢は増えてきましたし、「微アル」みたいなトレンドも生まれていますが、飲食店・レストランなどでノンアルコールのメニューが充実しているところはまだまだ数えるほどしかありませんよね。この本でも述べられていますが、例えば高級な寿司店やフレンチレストランなどで、お酒を飲まないことが前提で楽しめるお店はまだ少ないと思います。

だからこそ藤野氏はゲコノミクス、つまり下戸を念頭に置いた市場がこれから発展していくだろうと予想されているわけです。以前にもご紹介した『はじめよう!ノンアルコール』のような本を参考に、飲食業界がどんどんこの方向で開発を競ってほしいと思います。たぶん未来は明るい。そう思っています。

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はじめよう! ノンアルコール: 6つのアプローチでつくる、飲食店のためのドリンクレシピ109

*1:この本を読む前にFacebookの『ゲコノミスト』というグループに参加していたのですが、なんと、というか考えてみれば当然ですが、そのグループの主宰者が藤野氏なのでした。