インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

そんなに炊事がきらいなんですか

今日の新聞朝刊に、興味深い記事が載っていました。新聞各社が加盟する日本世論調査会が実施した「食と日本社会」という世論調査の結果です。いわゆる「ポテサラ論争」を踏まえた質問や、「孤食」、コロナ禍での外食の減少など注目ポイントは多いのですが、私がいちばん興味を持ったのは「あなたの家で食事を作っている人は男性ですか、女性ですか」という質問です。

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きょうび、男性か女性かという質問、しかもそれが「あなたの家で」という前提のもとでなされること自体が時代遅れのような気もします。それは、家族は、あるいは世帯は、男性と女性のペアによって営まれるものという前提がデフォルトで設定されていて、多様な家族のあり方が最初から想像すらされていないことが透けて見えるからです。それでもその時代遅れの価値観にしっかりと呼応するように、有意すぎるほど有意な数字があらわれていて、「2021年になってもこれですか……」とため息をついたのです。

問12 あなたの家で食事を作っている人は男性ですか、女性ですか。
男性 9%
どちらかといえば男性 3%
どちらかと言えば女性 20%
女性 67%
家で食事は作らない 1%
無回答 0%
東京新聞8月12日朝刊より

数字の大きい方から並べず、男性→女性という順になっているのも引っかかりますが、とりあえずそこは目をつぶるとしても、この性差の大きさといったら。しかも東京新聞によると「二人以上の世帯に限ると『どちらかといえば』を含め女性が計94%、男性は計6%とさらに男女差が明確に」なったそうです。

この記事に引用されている2012年における国際的な比較でも、日本の男性が食事を作る割合は現在とほとんど変わっていませんでした。ほぼ10年前の調査で情報が古いですが、逆にその古い調査と比較してもほとんど変わらないというのは、ちょっと驚きです。

style.nikkei.com

もちろん食事に限らず、男性の家事負担率全般が軒並み低いというのはよく指摘されることですし、そこには社会全体における「男女共同参画」が遅れに遅れているという現状が大きく横たわっているのでしょう。ですから一朝一夕に大きな変化は望めないのかもしれませんが、なぜ日本の男性がこれほど頑迷なまでに家事に対して消極的なのか、本当に私には解せません。

私は基本的には「明日は今日よりもっと良くなる」と思っている楽観主義ですが、自分が高校生の頃から現在までずっと炊事や選択や掃除などをしてきたなかで感じるこの「日本の男性の変わらなさ」はちょっと異様な感じがします。もっと社会全体で、暮らしを立ち行かせて行くために不可欠な家事をしないのは恥ずかしいことだ(身体的な条件で不可能な人を除いて)という共通認識を醸成して行かなければならないですね。

いや、それじゃ男性諸氏はますます頑なになってしまうかなあ。むしろ家事の楽しさを前面に押し出して……いやいや、正直、家事は楽しいだけじゃなくて、ときに面倒でしんどいこともあります。それでも忙しい暮らしの中に家事を織り込んでやりくりする営みの折々に、私はこのしょうもない自分の人生にも何か深い意義みたいなものがあるかもしれぬと思えることがあるんですけど。まだうまく言語化できませんが、いつかもうちょっと説得力のある「家事(とりわけ炊事)のおすすめ」ができればいいなと思っています。