インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

やさしいフィンランド語による討論会

Twitterのタイムラインで教えてもらったのですが、“The Asahi Shinbun GROBE+”のウェブサイトに、とても興味深い記事が載っていました。
globe.asahi.com
先日行われたフィンランドでの選挙に先立って、投票権を持つ外国人のために簡単な言葉で政策を解説する番組が放送されたという記事です。いわば「やさしいフィンランド語」による政治討論会。与党のサンナ・マリン首相をはじめ、九つの政党の代表ができる限り簡単な言葉で政策や争点について、できる限り簡単な言葉で、ゆっくりと話しています。

面白いのは審査員によって画面に「言葉が簡単かどうか」を表すメーターが出ることです*1。それが話している政治家自身にもリアルタイムで伝えられる。これは弁舌の才が問われる政治家としてはけっこうな試練ですよね。

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私くらいのフィンランド語初中級レベルでも、字幕の力も借りながらなんとかついて行けそうなくらい平易な言葉が使われています。もちろん人によってはかなりスピードが速くなったり、語彙が難しくなったりして、そのたびにメーターの針が左右に振れます。これをまずはディクテーションして、字幕で答え合わせして、そののち字幕なしで聴き取り、シャドーイング……というふうに何度も学べる教材としても使えそうです。

政治家がみんなに分かりやすい言葉で話そうと努力するというのは、とても意義ある試みですね。日本でも行政などが、例えば災害情報などを「やさしい日本語」で伝えるといった試みが行われていますが、政治家はどうでしょう。ごまかし、ねじまげるばかりでなく、答えない、語らないというディスコミュニケーションが蔓延しています。フィンランドの政治家を(まあ、かの国でも内側ではいろいろあるかもしれませんが)少しは見習ってほしいものです。

*1:“GROBE+”の記事では「スピードメーター」となっていましたが、“Puheen helppous(スピーチの平易さ)”なので「簡単かどうか」を表すメーターのようです。