インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

電子ペーパーで絵を飾りたい

スウェーデンの画家に Simon Stålenhag(シモン・ストーレンハーグ)という方がいて、私はその荒涼としたディストピア感あふれる画風になぜか惹かれています。心躍るような要素はほとんど見当たらないにも関わらず、わずかに漂うユーモア。そして、よくよく目を近づけてみればかなりラフな筆使いなのに、そこになぜか人間の息遣いのようなものを感じるのです。

とくに薄暗い夕刻の風景で、遠くに見えるアパート群の窓に灯るあかりや自動車のテールランプなどに、私はその息遣いのようなものをリアルに感じます。全体としては殺風景で、なんともいえない不穏な気持ちになりながらも、同時に温もりを感じるのが不思議なのです。

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http://www.simonstalenhag.se/

以前このブログで「寅さんが夜汽車に揺られながら『あそこにも電灯がともっている。そこにも人の暮らしがあるんだなあ……』とつぶやくような感じ」と書きましたが、もっと正確なセリフを公式サイトで見つけました。第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』のセリフだったようです。

夜汽車の中、少しばかりの客はみんな寝てしまって、なぜか俺一人だけがいつまで立っても眠れねぇ/真っ暗な窓ガラスにホッペタくっつけてじっと外を見ているとね、遠くに灯りがポツンポツン……/あー、あんな所にも人が暮らしているかあ……/記者の汽笛がポーッ……ピーッ/そんな時、そんな時よ、ただ訳もなく悲しくなって涙がポロポロこぼれてきちゃうのよ。
https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie/11/

この Simon Stålenhag 氏の作品、ウェブサイトで見られるほか作品集も出版されていて私も持っています。ところが氏のウェブサイトのリンクから、作品の複製画が売られているサイトを見つけました。作品によっては額装したものもあります。強力な物欲に襲われました。
www.redbubble.com
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https://www.redbubble.com/i/framed-print/Fj%C3%A4rrhandske-by-simonstalenhag/10647548.L0LHG

……しばらく深呼吸して物欲を鎮めました。氏の作品には好きなものが多すぎて、どれかひとつだけ選ぶというのも無理がありますし。しかしこうした作品の複製画だったら、印刷物じゃなくて電子ペーパーみたいなので再現できないかな。要するにKindleのE-インクみたいなのを大きくして、かつ高精細フルカラーで再現するのです。SF的な要素の強い Simon Stålenhag 氏の作品にぴったりだと思うんですけど。

調べてみたら、まだそういう大画面で高精細フルカラーの電子ペーパーは実用化されていないようです。現在のところはモノクロのポスターや掲示板どまりのよう。
www.crea2007.co.jp

でも近い将来、そういう技術も開発されますよね、きっと。スマホやデジカメで取った写真をディスプレイするデジタルフォトフレームはすでに普及していますし、結構大きなサイズのものもありますが、消費電力と、画面が発光しているのが難点です。「一点物」のオリジナルはもちろん価値がありますが、そうしたものには手が出ない私たちでも電子ペーパーを使って、ネット経由で気軽にアート作品を飾って楽しむ時代が来ればいいなと思います。E-inkだから時々絵を入れ替えたりもできますし。

追記

まだ一部のマニアが自作している段階で、フルカラーでもなく解像度も低いですが、電子ペーパーの額縁を楽しんでいる方はいらっしゃるようです。
raspida.com