インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ファックスとか押捺とか

私が勤めている学校のうちの一つは、外国人講師もたくさん勤めています。非常勤で多くの学校を掛け持ちしている方が多く、中には人材派遣会社に登録してあちこちの学校へ派遣されている方もいます。その中のお一人に英国人の先生がおり、彼は非常勤講師以外にも日本の仲間と一緒に民泊を経営するなどいろいろな活動をしていたのですが、今年いっぱいで日本を引き払って英国に帰るとのことでした。

コロナ禍の影響もあったのだと思います。とても寂しい思いで先日「またどこかで会いましょう」とお別れしたのですが、彼が最後まで「不思議ですねえ」と、半分笑いながら使っていたのが日本のファックスでした。派遣会社の一つが日報をファックスで送れと指示してくるんだそうです。

彼の出講日は一週間に一回で、毎回日報を送っていたんですけど、パソコンで日報を書いて、プリントアウトして、ファックスに差し込んで、ゼロ発信で派遣会社の電話番号を押して……という一連の流れがとても面倒そうでした。特にファックスの使い方を最後まで覚えず、毎回私に「どうやって使うんでしたっけ?」と聞いてくるのです。わはは。彼にとってみれば、週に一回、手回し式の計算機を使うようなものだったんでしょうね。

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機械式計算機 - Wikipedia

うちの教員室にファックスがあるのは、主に官庁などにさまざまな申請や見学の申し込みをする際、いまだにファックス限定というところが多いからです。しかし、私たちの国はこの、すでに他の国では博物館に展示されているような機械をいつまで使い続けるんでしょうね。聞いたところによると、紙という実物で書類が残るから確実だという声があるそうですが……私にはよく理解できません。

とはいえ、まあ昔に比べれば、申請書や申込書をメール添付で送ることができるところも増えてきました。ところが、印鑑を捺さなきゃならないとか、サインは手書きでと指定してくるところもあるので、添付されたpdfファイルを印刷して、押印して、それをスキャナで再度pdf化して送るなんてことがまだ行われています。私がぶーぶー言いながら毎回そういう文書の処理をしていると、くだんの英国人の先生はニコニコしながら「たいへんですね」という顔をされていたのでした。

たぶん彼は英国に帰って、あちらで授業をするときに、この日本の不思議な慣習を授業開始時の「つかみネタ」に使うでしょうね。いい加減やめましょうよ、こんなこと。

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