インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

「俺はまだ本気出してないだけ」は周りに伝わる

ジムのトレーナーさんと、「サラリーマンのジム通いをどうやって習慣化するか」について話をしました。トレーナーさんによると、忙しさにかまけてついつい「今日はやめとこ」が続くと、ジム通いが億劫になると。

トレーナーさんと私で意見が一致したのは「ジムに行くスケジュールを先に入れちゃうべき」という点でした。スケジュール帳でもGoogleカレンダーでも何でもいいのですが、先に「今週はこの日とこの日のこの時間にジムに行く」という予定を入れてしまい、そのスケジュールをとにかく守るのです。

それから私はもうひとつ、ジム通いの習慣化はトレーナーさんの資質にもよると思っています。資質と言うとなんだかエラそうな物言いですが、つまりトレーナーさんが仕事を前向きにやっているかどうか、その仕事を好きそうに見えるかどうかということです。そういうトレーナーさんの姿勢はけっこうこちらにも伝わってくるんですよね。

十年くらい前に別のジムに通っていた時期があるのですが、そのジムのトレーナーさんたちはいずれも「腰掛け」で仕事をしている雰囲気が濃厚でした。教えていてちっとも楽しそうじゃないの。そういうトレーナーさんのいるジム通いは長続きしないです。

「腰掛け」で仕事をしているというのは要するに、「俺のいるべき場所はこんな会社じゃない」というスタンスです。もちろん一つの会社や仕事にずっと留まり続けている必要はないんですけど、とりあえずいま自分はこの場所に身を置いて働いている、だったら(一時的にせよ)その仕事を好きになってみよう、もっとよくできることはないか探してみよう、お客さんに喜んでもらおう……等々の前向きな姿勢がない状態で働いている。そういうオーラみたいなのって、私の経験では驚くほど周囲に伝播するように思います。

f:id:QianChong:20201211084750p:plain
https://www.irasutoya.com/2014/06/blog-post_28.html

「俺はまだ本気出してないだけ」というマンガと映画がありましたけど、そうやって俺の居場所はここじゃない的な雰囲気を発散している人ほど、結局はずるずるとその会社に居続けるように思います。腰掛けではなく前向きに仕事をしている人って、必ず周囲の人(社外も含めて)の目に留まるんですよね。そして何かの拍子に「退職するの? じゃあうちの会社に来ない?」とか「私の知り合いでこんなことをしている人がいるんだけど興味ない?」とか声を掛けられたり引き抜かれたりする。それって、普段の前向きな姿勢が周囲に伝播していたからだと思うんです。

なんだか自己啓発本みたいになってきちゃいましたけど、とにかくそういう前向きな姿勢の人には何か魅力があって、引き寄せられるような気がする。だから私もジム通いが習慣化できたのだと思っています。このジムのトレーナーさんたちはみなさんその仕事が好きそうなんです。

前にも一度書いたことがあるんですけど、いま勤めている学校の一つは入り口に守衛さんがいて、毎朝研究室の鍵を受け取るシステムになっています。その中でお一人とても若い(たぶん二十歳代前半)紅顔の守衛さんがいるのですが、彼は私が入り口に姿を見せるや、後ろのキャビネットから私の所属する研究室の鍵を取り出して待っているのです。ほかの守衛さんは私が「○○棟の○○研究室お願いします」と告げてから鍵を取り出すのに(というか、それが普通ですけど)。

この学校はたくさんの部署があって、守衛さんが管理している鍵はたぶん数百にも及ぶはずです。しかも早朝の当番はローテーションがあるようで、彼が担当しているのは一週間に一度くらいです。なのにあの若い守衛さんは私の顔を覚えていて、こちらが言う前に鍵を取り出してくる。いちど「よく覚えてらっしゃいますね。どうやって覚えるんですか」と聞いたことがあります。彼は「いや、別に……毎朝いらっしゃる方なので……」と控えめでしたが、きっと彼は彼なりに「自分がいまここでできることは何か」、「この仕事をどうやったら少しでも気持ちよくできるか」と前向きな姿勢で考えているのだと思うのです。

f:id:QianChong:20201211085228p:plain
https://www.irasutoya.com/2017/10/blog-post_35.html

スーパーのレジでも、ラーメン屋さんの配膳スタッフでも、そうやっていまの仕事に前向きで、少なくとも「自分がいまここでできることは何か」を考えて続けている人って、分かるものです。そういう人を見るといいなあ、それに比べて自分はどうかなあと思う。そういう人に、人は引きつけられるのだと思います。

qianchong.hatenablog.com