インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

新手のタバコ広告

東京メトロの構内で配布されている『メトロミニッツ』というフリーマガジンがあります。
www.ozmall.co.jp
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先日手にしたこのフリーマガジンには、「IPPUKU@HOME」という記事が載っていて、「夏の『一服』にぜひ取り入れたいのが、爽快感を与えてくれるアイテム」としてミントティーと「Ploom S 2.0」が紹介されていました……って、これ、加熱型タバコの宣伝じゃないですか。

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諸外国の中でも際立って規制のゆるいうちの国のタバコ広告ですが、それでも紙面の何割かには警告文を入れるなどそれなりに厳しい決まりがあります。私の若い頃は都心の繁華街などあちこちにタバコの巨大看板が立っていたものですが、そういうのもなくなってかなり進歩してきました。ところがその一方でこうした、一見「快適な暮らしをご提案」みたいなロハスっぽい記事に擬態した広告が登場しつつあるわけです。

社団法人日本たばこ協会は「製造たばこに係る広告、販売促進活動及び包装に関する自主規準」を策定しているのですが、そこにはこうあります。

c. 新聞、雑誌又は類似の印刷出版物(以下、出版物という。)による製品広告は、次による。
① 以下の事項について、合理的な根拠がない場合には、当該出版物に広告を掲出しない。
(a)成人の読者が読者全体の75%以上であること。
(b)未成年者の読者数が未成年者総数の10%未満であること。
(c)女性の読者が読者全体の50%未満であること。
② 一般読者向け出版物の包装あるいは外表紙を広告に使用しないこと。
③ 未成年者向けに特に訴求する記事等に隣接する場所に意図して広告を掲出しないよう合理的な措置を講ずること。
(以下略)

地下鉄の構内で誰もが入手できるフリーマガジンという媒体という点を考えると、この自主基準にも抵触するような気がしますけど、どうなんでしょうね。記事に載っているQRコードを読み取ると、こちらのウェブサイトが現れます。
ploom.clubjt.jp

日本は加熱式タバコの普及率が非常に高いとされており、「たばこに寛容、ガジェット好き、空気を読むなど、日本人の国民性がマーケティングに利用された結果、アイコスは日本で大成功し、世界の実験場になった」という記事を読んだことがあります。確かに、路上喫煙の禁止など自治体の規制も強くなってきている最近では、この加熱式タバコを往来で吸っている人をかなり見かけるようになりました。
media.moneyforward.com
私はこの加熱式タバコ、「グレーゾーン」的なその存在が、往来での喫煙やそれに伴う受動喫煙、さらには喫煙習慣の広範囲への再拡散などを後押しするという点で、従来のタバコよりたちが悪いと感じています。Ploomの「よくあるご質問」にはこうあります。

Q.蒸気(たばこ葉由来成分含む)の、タール・ニコチン値はどのくらいか?
A.火を用いず、たばこ葉を燃やさないという製品特徴から、燃焼によるタール・煙は発生しません。ニコチン量は、プルーム・テック10パフ(吸引回数10回)でおおよそ0.1~0.3mgです。 ※紙巻たばこのTN測定法(ISO法)で測定した数値となります、また吸引条件により値は異なります。
Q.なぜタール・ニコチン値が書かれていないのか?
A.プルーム・テック専用のたばこカプセルは「加熱式たばこ」に分類されます。加熱式たばこは、確立された測定法が存在していないことから、タール・ニコチン値の記載はしていません。
Q.プルーム・テックには、健康へのリスクがあるのか?
A.プルーム・テック専用のたばこカプセルには、たばこ葉を使用しています。このため、プルーム・テックの使用は健康へのリスクを伴います。

やっぱり、従来のタバコと変わらないじゃないですか。結核予防会結核研究所名誉所長の森亨氏はこうおっしゃっています。

世界保健機関(WHO)は電子タバコについて「大半の国で規制のはざまとなり,医薬品としての規制を逃れ,タバコ製品に対する規制を回避している」とし,「健康上の利益,被害削減,または禁煙に対する有用性などの主張は,科学的に証明されるまで排するべきである」としています。
https://jata.or.jp/rit/rj/374-27.pdf

『メトロミニッツ』のこの記事は、まさにこのような規制を回避している「記事に見せかけた広告」だと思いました。こうした新手の広告にも規制が必要ではないかと思います。