インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

バーミキュラのフライパン

比較的長持ちして大事に使ってきたテフロンのフライパンが(というかフライパンのテフロンが)かなりくたびれてきたので、思い切って気になっていたバーミキュラのフライパンを購入しました。といっても購入したのはおよそ二ヶ月ほど前です。新型コロナウイルスの影響に加えて、人気で注文が殺到しているらしく、注文から二ヶ月でようやく届きました。年初に買ったメガネもそうですけど、いまのこの時代に注文から数ヶ月もかかって品物が届くというのも、かえって新鮮な時間感覚です。

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https://www.vermicular.jp/products/fryingpan/

鋳物にホーロー引きというと、ル・クルーゼのようなどっしり重い調理器具を想像しますけど、このフライパンはかなり薄くて軽い作りです。それでも鋳物には変わりないので、片手でひょいひょいと返しながら炒めるような料理には向いていないかもしれません。むしろこのフライパンは、蓄熱性が高い鋳鉄の特徴を生かして、急速に水分を蒸発させてパリッとした仕上がりにする料理や、逆に弱火でゆっくり仕上げるような料理に向いているのだと思われます。

フライパンにはかなり分厚い取説+レシピブックがついていて、十分に余熱してから調理すると焦げ付かないとの指南がありました。なるほど、私は同じ鋳物のフライパンであるLODGEのスキレットを長年愛用しているのですが、あれも十分な余熱をしてから使うと、ステーキなどかなりおいしく焼けます。あとパエリアみたいな炊き込みつつ最後はパリッと蒸気を飛ばしたいような料理にも活躍します。

ただスキレットがとにかくどっしり重くて、返しながら炒めるどころか流しの下から取り出してコンロに置くだけでも気合いを要するのに比べると、このバーミキュラのフライパンはちょっと鋳物らしからぬ薄さと軽さです。それで最初にこのフライパンで餃子を焼いた時は、あんまり予熱し過ぎるとよくないような気がして、そこそこのところで餃子を並べ、テフロンのフライパンの時と同じような差し水加減で焼いてしまいました。

これが大失敗でした。焼き餃子でここまで失敗したのは何十年ぶりかしらというくらい焦げ付きました。泣きそう。そこで初めてわかったのですが、やはりこのフライパンも最初にしっかり予熱することが肝心なのでした。コンロの高温センサーが反応して火が弱まるまで余熱して、そののち油をなじませ、油からもうもうと煙が出るくらいになったらごく弱火にするか、いっそのこと火を止めちゃう。そのあと餃子を並べ、蒸し焼きするための水もかなり少なめで、そのかわりごく弱火のままじっくり焼いていく……というある種の「技術」が求められます。

その意味では気軽に焼ける「テフロン具合」抜群のティファールみたいなフライパンとはかなり違う発想が必要な調理器具で、好みが分かれるところかもしれません。ただ、そうやってじっくり焼いた餃子は「羽根」も含めてかなりパリッとしていて、格段のおいしさでした(まだ微妙な火加減に慣れきっていないので、焦げ目が偏っています)。あと、焼き目で肉汁を閉じ込めたあとゆっくり煮込むタイプのハンバーグなんかも(『きのう何食べた?』に出てくる、玉ねぎのいっぱい入ったあれ)かなりおいしくできました。これからも色々試してみるつもりです。

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ところでバーミキュラさんは最近「今日の旦那メシ」というキャンペーンをやってらして、趣旨としては「旦那」も積極的に参画しようという方向なので微笑ましくもあり、あまり目くじら立てるのも無粋なのですが……ごめんなさい、やっぱり「男の料理=ホビー」って感じを強めている感が否めなくて複雑な気持ちになってしまいます。日々繰り回している炊事って、そういう料理名がハッキリつけられないものが常じゃないかなと思うのです。ただまあ、新しいフライパン買ったってんで、さっそく「餃子」だの「ハンバーグ」だのハッキリ料理名がついたものばかり試してる私が言っても説得力ゼロですが。

https://my.vermicular.jp/feature/detail/72