インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

疲れているからこそ粉をこねたくなる

以前「疲れているのに餃子を包みたくなる」ことがよくある、と書きました。

qianchong.hatenablog.com

世の中には毎度毎度の炊事に倦んでノイローゼ気味になっている方も多いそうです。もちろんどこのご家庭にもそれぞれの事情があって、小さいお子さんがいらっしゃるとか、パートナーが家事全般に非協力的だとか、本来の炊事以外のところでストレスを重ねている方もいらっしゃるのだとは思いますけど。ただ私の場合は、手を動かして料理を作ることがストレス解消になっているんですね。その点で、よしながふみ氏のマンガ『きのう何食べた?』に出てくる佳代子さんが言う「ごはん作るだけでイヤな事あってもけっこうリセット出来んのよね」にとても共感します。

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餃子を包みたくなるとはいえ、そこは時短で市販の皮を買ってきちゃいますが、以前は皮も粉からこねてのばしていました。そう、疲れているのに、いや、疲れているからこそ粉をこねたくなる体質でもあるのです。粉からこねてご飯を作るなんてそれこそ「男のホビー」みたいに思われそうですけど、そんなことはないのです。本当に粉をこねるのが好きで、以前フリーランスと宮仕え半々だった頃は通勤時間がないぶん余裕があったのか、三日と開けずにうどんを打ったりバゲットを焼いたりしていました。

やっている方は同意してくださると思いますが、粉をこねるのって思ったより簡単かつ短時間でできるんですよね。それを初めて知ったのは大学生の時、宮崎県の土呂久で砒素鉱山の鉱毒被害に苦しむ集落の人々と交流を持った頃でした。訪ねたとあるお宅がちょうどお昼前の時間で、その時に「もうすぐお昼だから、うどんでもつくるかね」と粉をこねていたおばさんがいて、とても驚いたことを覚えています。「うどんでも」という感じで、ごくごく日常のルーチンワークとして粉をこねるのか! ……と。

後年、中国に留学したときも、みなさんけっこう頻繁に粉をこねて水餃子を作っていたりして、ますます「毎日のように粉をこねる」ってのはごく普通の風景なんだと思うようになりました(もちろん中国のみなさんが毎日水餃子を包んでるわけじゃなくて、やはりあれは「ハレ」の料理ではあるんですけど)。そういえば私、昔は彫刻を学んでいて粘土をこねるのは得意なのでした。彫刻や陶芸で粘土をこねる時の「菊練り」という方法は、粉の生地を作るときにも使えます。どちらも要は粉(or土)と水分をできるだけ均等に一体化させる工程ですから。

粉をこねていると、とても幸せな気分になります。それは粉と水の量がバッチリ決まって、赤ちゃんの肌のようなもちもちした表面になるその瞬間が美しいからです。さらに発酵系の、つまりイーストなどを入れる記事の場合は、一次発酵が終わってまとめ直す時のあの手触りがたまりません。ピザ生地や包子などは記事に油を少し練り込むのですが、あの油が十分に練り込まれた記事の手触りも、いまどきの言葉で言えば「エモい」。生地フェチにとっては一番お手軽なストレス解消法です。

ともあれ、昨日もオーブンの天板いっぱいにピザを焼きました。こねるの5分、発酵30分(この間に具や他のおかずを用意)、のばして具をのせて5分、焼いて20分。1時間あれば作れます。

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