インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

Zoom疲れ

オンライン授業(遠隔授業)への対応をするため、職場に必要な資料を取りに行って来ました。図書館も予約制で利用できるようになったので、必要な本をイントラネットで注文しておき、それを受け取るためでもありました。満員電車を避けて自転車で来てみましたが、学校がある新宿のオフィス街には、驚くほど人が多く行き交っていました。ゴールデンウィーク開けでかなり気が緩んでしまったような印象もあります。

ほとんど一ヶ月ぶりに職場に出て仕事をしましたが、やはり仕事が捗ります。在宅勤務は通勤の苦労がなくてとても快適ではあるけれど、うちは寝室とリビングの二部屋しかない激狭物件なので、妻も私もお互いの仕事を邪魔しないようにして気疲れします。オンライン授業の録画をするのも容易ではありませんし、断続的に家事もこなさなければなりません。在宅勤務になってから分かったのですが、家事って「いつでもできる」状態にあるとかえってダラダラしちゃうんですね。出勤していた時は、もっとまとめてテキパキとこなしていたように思います。

新聞にはよく「テレワーク疲れ」とか「コロナ疲れ」、あるいは「自粛疲れ」などという見出しが載っています。みなさん、普段とはかなり違う生活の仕方を強いられているおかげで、そうとう疲れが溜まっているようです。もう少し続けていたらじきに慣れてくるのかもしれませんが、これだけはもしかしたらずっと慣れないかもしれないなという疲れがもうひとつ見つかりました。それは「Zoom疲れ」です。

ここのところ毎日同僚と、Zoomで定時のウェブ会議を開いています。リアルタイムでやり取りしながらオンライン授業の準備をしたり、学生さんのケアをしたり、学校側に色々な要望や要求を出したりしているのですが、会議のあとにこれまでにはなかったタイプの疲労感を覚えるのです。会議のあとどころか、会議の最中にもかなり疲れを感じています。自分では、これはオンラインでのやり取りに特有な、普段よりも意識的に「誰に向かって・何を・どう伝える」のかを言葉で表現しなければならないせいかなと思っていました。ウェブでのやり取りにつきまとう一種の「隔靴掻痒感」が疲れを催すのかなと。

そう思ってネットで検索してみたら、Zoomなどを使ったこうしたウェブ会議・ビデオ通話に特有の疲労について、いろいろと記事が見つかりました。

natgeo.nikkeibp.co.jp

nazology.net

なるほど、予想した通り、まずはリアルなコミュニケーションで無意識的に活用しているボディランゲージやたたずまいや場の雰囲気といったようなものがウェブ会議では希薄になるため、そのぶんを脳が補おうとして普段よりも疲れるようですね。また通信環境などによるちょっとしたコミュニケーションの齟齬(音声や映像の遅延とか欠落とか)が積み重なることも、脳に負担を欠けていると。

オンラインでの授業を早くから取り入れて来られた学校の方々の実践例をウェブで拝見していたら、ビデオによるレクチャーに対して学生が集中できる時間がかなり短いという体験談が語られていました。通常の対面授業が例えば1時間だったとして、その1時間分をまるまる動画にするとかウェブ会議でのインタラクションにしてしまうと、とてもじゃないけど集中してくれないというのです。せいぜい20分から30分、いや10分過ぎたらもう集中できなくなるという意見もありました。

これは何となく分かる気がします。私は以前オンラインで受講する形式の連続セミナーを受けたことがあるのですが、そのビデオは授業をまるまる撮影したもので90分もありました。やってみて分かりましたが、一時間半も動画を見続けるというのはけっこうしんどいです。ですから私は、1.5倍速とか2倍速にして視聴したり、教科書で当たりをつけながら「飛ばし飛ばし」で視聴したりしていました。

今後もしばらくはオンライン授業が続く予定なので、現在いろいろと課題や教材を作っていますが、通常の対面授業をそのままオンラインで再現する「同期型」の授業は当面難しいだろうなと感じました。第一に学生さんのネット環境が千差万別で、かなり貧弱な環境の人もいるため、そんなに大量の動画をリアルタイムでやり取りするのは実質的に不可能だからです。そして第二に、そもそもそんなに大量の動画を人は延々見続けることはできないだろうからです。

考えてみれば映画やドラマだって、三時間とかの超大作になると観終わったあとはぐったり疲れますよね。なのに週五日、朝から晩まで次々に対面授業と同じボリュームの動画やリアルタイム映像を視聴し続け、さらにはインタラクションするなんてとてもじゃないけどできないと思うのです。やはり、これまでとはまったく違った発想で、しかし遠隔性を逆手に取ったような自発的な学びを起動できる教材を編み出していかなければならないのでしょう。

これはまた新たな「疲れ」を呼び込みそうです。

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https://www.irasutoya.com/2014/10/blog-post_659.html