インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

武漢の現状を伝える映像を見て

留学生の通訳クラスで、武漢の現在(正確には一月下旬時点ですが)を伝える映像を教材に使ってみました。


90後小哥冒死拍下中國武漢第一批封城影像 Post-90 Guy Risks His Life to Record Wuhan City Under Lockdown Firsthand

近代的な大都会である武漢の繁華街にまったく人影が見られないなど驚きの映像ですが、とても客観的に武漢の現在、その一部を切り取っていると思いました*1。こんな大都市を“封城(都市の封鎖)”してしまえる中国の政治体制に逆に恐ろしさも感じますが、少なくとも武漢のみなさんは黙々と事に対処しようとしている……そんな雰囲気が伝わってきました。こういう内容こそ、通訳や翻訳で日本の方々にも伝えたい。そう思って教材に選んでみたのです。

翻って日本では、センセーショナルな報道(特にテレビ)ばかりが加熱しているように思えます。おどろおどろしい音楽を使ったり、過度に緊迫した口調でクルーズ船や隔離施設などの前からレポートしたり……報道の役割を履き違えているのではないでしょうか。報道は「バラエティ番組」化することなく、もっと抑制的に淡々と事実だけを伝えてほしいと思います。

思い返せばSARSのときにも、あたかも中国全土が汚染されているようなイメージで語り、現地の日本人留学生と日本にいるその家族とのやり取りを扇情的に伝える報道(たしかNHKのテレビニュースでした)などに憤ったものでした。今回は未知のウイルスということで、まだワクチンや特効薬などがないため、人々の不安も募っているわけですが、現時点では日本国内で感染が爆発的に広がっている状況にはありません。通常のインフルエンザでは、毎年それをはるかに上回る数の死者が出ているのです。

●参考:厚生労働省新型インフルエンザに関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html#100

視聴率争いに汲々としているテレビ業界は聞く耳を持たないかもしれませんが、せめて受け取る私たちの方は冷静でありたいものだと、この武漢の映像を見て思いました。

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*1:中国語のタイトルは“冒死(死を賭して・命がけで)”などと扇情的ですけど。