インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

留学生による日本語劇

秋に入り、文化祭の季節がやってまいりました。私が奉職している学校のあるキャンパスでも、学生さんが様々なイベントを行います。このキャンパスは大学院・大学・専門学校の複合施設なのですが、私が担当している専門学校の、通訳や翻訳を中心に日本語を学んでいる留学生は、恒例の日本語劇を披露します。今週末の連休が本番なので、目下通し稽古の最中。まだまだ台詞が不安定だったり、もうひとつ「恥」を捨てきれていなかったりする部分もありますが、何とか本番では自分なりの達成を感じてほしいと思っています。

今年は一年生が『世界三大料理』、二年生が『通訳機械の反乱』というお芝居を演じます。いずれもネットにある脚本を元に、原作者さんのご了承を得て大幅に改変させていただき、上演台本にしています。日本語を学んでいる留学生のお芝居というと、とかく「日本昔ばなし」みたいなのとか、そうでなければ「内輪受け」に偏った内容になることも多いのですが、それでは面白くないので、容赦のない日本語の台本を作り、スラングおちゃらけた言い回し、時事を盛り込んだ内容、哲学的で難解な言葉まで喋り倒すことを念頭に置いています。

これはまた一面、語学や通訳が持つ一種の「演劇性」に着目した試みでもあります。母語ではない言語で話すという語学も、誰かに成り代わって話すという通訳も、ある程度までもう一人の自分をイメージすること、言い換えればある種の「芝居っ気」が求められると考えられるからです。そこまでいかなくとも、人前でわかりやすく堂々と話すテクニック、パブリックスピーキングのテクニックは留学生のみなさんがこの先どんな仕事に就いてもきっと役立つ。そう考えて私たちは演劇訓練をカリキュラムに組み込んでいます。

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世界三大料理』は、現在のところ「三大」に数えられるフランス料理・中華料理・トルコ料理の座を狙って、その他の料理が攻勢を仕掛け争奪戦が巻き起こるというドタバタ喜劇です。『通訳機械の反乱』は、ある企業で最新の通訳機械を使って面接を行っているうちに機械の思わぬ脆弱性があらわになり、通訳機械が高度に発達した世界では外語を学ばなくなった人類の「知」が退化するのではないか……という未来を予見する、と、こう書くとなんだか高尚ですけどその実これもドタバタ喜劇、です。入場無料。ぜひご高覧賜りたいと思います。

D館の「D38」教室です。

  世界三大料理 通訳機械の反乱
11月3日(日) 13:00/14:00 13:30/14:30
11月4日(月) 10:00/11:00/13:00/14:00 10:30/11:30/13:30/14:30

http://www.bunka.ac.jp/contents/2019bunkasai.pdf