インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

遺体修復士のことば

今日も今日とて趣味(と実益を兼ねた)のディクテーションをやっていたわけですが。こちら↓は語速もゆっくりだし、そんなに難しい言葉もつかっていないけれど、とても深みのある動画で、通訳クラスの教材に使ってみようかなと思いました。極道から足を洗って遺体修復の仕事に就いた台湾人男性のお話です(中国語ですが、画面下のメニューから英語字幕も選べます)。

youtu.be

遺体修復は、遺体を生前の姿にできるだけ近づけるというお仕事。事故や事件などで損傷した遺体を修復したり、そこまで行かなくても遺族が穏やかな気持ちで見送ることができるように多少顔つきをふっくらさせるとか色艶をよくするとかいった修復もあるそうです。

映画『ゴッドファーザー』で、長男サニーを暗殺されたドン・コルレオーネが「これじゃ母親に見せられん」と遺体修復を頼む場面がありました。日本でも葬儀場などで「死に化粧」をしたり、火葬まで時間があく場合などに変色などを防ぐ措置をしたりしてくれますが、この男性の場合は事故や災害などで亡くなった方のための慈善事業として活動されているようです。

こうしたお仕事は「エンバーミング」と呼ばれ、業界団体が「エンバーマー」という国家資格創設をめざしているという報道を読んだことがあります。

www.sankei.com

刑務所で何度も服役するうち、いつの間にか若い衆から「兄貴」と呼ばれるようになった自分に戸惑っていたこの男性、あるとき「これからは真人間になろう」と決意したそうです。そして技術を身につけ、澎湖での航空事故、高雄での大規模ガス爆発事故、台南地震で倒壊したマンションの現場、昨年の宜蘭列車脱線事故など様々な現場から招請されて遺体修復を行ってきた彼の言葉は、訥々としていますがとても重みがあります。

もしこういう言葉を通訳する機会があったとしたら、きちんとその思いを伝える仕事をして差し上げたいと思いますよね。そういう“職業精神(プロ意識)”を生徒のみなさんにも発揮していただけるとよいのですが。

一番おしまいの言葉がまたいいです。「死は積極的に向き合うもので、怖がるものじゃない。死を恐れるのは、残り時間が少ないとか、やりたい事をまだやってないと思うからだ」。うんうん、その通りですよね。

f:id:QianChong:20190207163701p:plain