インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

食べ方を「可視化」したらとても新鮮でした

またまた大変失礼ながら、以前だったら絶対に手に取らないタイプの本でした。タイトル、装幀、イラスト、ぱらぱらっとめくってみたときの内容、特にやたら大きな活字(12ポイントくらいあります)の本文も含めて、ぜ〜んぶ。


筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方

……ところが、これがまた、刺さる刺さる。先回ご紹介したTestosterone氏の「筋トレ」シリーズ、今回は「食事篇」です。

qianchong.hatenablog.com

この本は「ダイエット」にベースを置いているので、私のように「更年期障害を克服して健康増進」のためにトレーニングをしている人はちょっと方向が違っています。それでも身体をできる限り健康な状態に保っておきたい、そのためには何をどう食べればよいのかについて、かなりシンプルなメソッドが提案されています。

そのメソッドは「マクロ管理法」。個々人の基礎代謝をもとに、一日に摂取すべき(摂取できる)総カロリー量を割り出し、その総カロリー量の範囲内で「マクロ栄養素」と呼ばれるP(蛋白質)、F(脂質)、C(炭水化物)をバランスよく食べるというものです。

……とはいえ。

えー、正直に申し上げて、私は生来の「どんぶり勘定人間」でして、この段階でもう半分投げ出しそうになっていました。好きな食事を自分でつくって好きに食べるのが一番幸せだし、食事制限やストイックなダイエット食などに手を出すくらいだったら多少余命が縮まってもいいや、それに少々下腹が出ている方が着物を着たときはカッコいいし……的なあまのじゃくでもありまして。

ところが、ここ数年にわたって幾度となく襲ってきた不定愁訴の波はあまのじゃくな自分を変えましたね、ええ。食事の量を減らし、浴びるほど飲んでいたお酒も週末に嗜む程度。そして今度は基礎代謝と総カロリー量の計算ですから。

そうしたら、なかなか新鮮な発見がありました。これまでの自分の経験や知識、ましてや主義やプライドなどはいったん括弧に入れて、何でも素直に試してみるものです。

基礎代謝と一日の消費カロリーを計算する

詳細はぜひこの本にあたっていただきたいのですが、文中でも紹介されている筆者主宰のウェブサイトで自分の基礎代謝と一日の消費カロリーを計算できる簡便なツールが公開されており、無料で使用できます。

書籍用マクロ計算ページ | DIET GENIUS.jp

ここで性別・身長・体重・年齢を入力すると、自分の基礎代謝が求められます。基礎代謝とは一日何もしなくても消費するカロリー量のこと。実際には生活や仕事があるので、ここに一日の「アクティブ度(生活や仕事の負荷の多寡)」、さらには自分の食生活改善の目的を入力します。私は日中も結構動いていますけど肉体労働というほどの重労働ではなく、デスクワークも多いので「低アクティブ度」。また食を改善する目的は多少の筋肉増強(主に腰痛予防と健康維持のため)……と入力。

こうして得られた私の一日の消費カロリーは2021kclでした。単純に考えれば、これより多く食べれば太り、少なく食べれば痩せることになります。このウェブサイトでは同時に、一日の消費カロリーのなかでP(蛋白質)、F(脂質)、C(炭水化物)をどのくらい食べてよいかまで計算してくれます。私の場合はP(蛋白質)124g、F(脂質)56g、C(炭水化物)255gになりました。

マクロ栄養素の量を確認する

お次は、実際に自分が食べている食事に含まれているPFCがどのくらいあるのかを求めます。ここが一番面倒でして、ここでもまた投げ出しそうになりましたが、今度は「カロリーSlism」というウェブサイトが手助けをしてくれました。こちらも無料です。

calorie.slism.jp

ここで普段の一日で食べている食事を思い出しながら、食材やメニューから同じようなものを探して計算してみました。あまりきっちりやろうとしても無理があるので、だいたいの近似値でいいやと割り切るのがよいと思います。

でもこの作業、やってみて今さらながらに気づいたのですが、世の中の様々な食品、特に加工食品には、そのほとんどにキチンと栄養成分表示表が載っているんですね。いや、当たり前なんですけど、今まで全く気にも留めていませんでした。

この表を参考にしながら、とにかく一日に食べた全ての食べ物のカロリーと「マクロ栄養素」の量を割り出しました。できれば日を変えて何パターンか割り出してみるとより実際に自分が食べているカロリーや栄養素の実質的な平均値に近づくかと思います。

この計算をやってみて初めて可視化された、というか、よく分かったのが、基本的な三食(私はお昼を抜くことも多いので二食)以外に食べているもの、つまり間食とかおやつとか、特に甘いもの(実は大好き)が全体のバランスにどう影響しているのかという点です。

例えば私は、通勤途中にあるパン屋さんで売っているすごく美味しい「クイニーアマン」をよく買うのですが、この一個を一日の総カロリー量とマクロ栄養素の計算に放り込んでみたところ、脂質と炭水化物のバランスがど〜んと崩れました。カロリーもすごいことになってる。たったひとつでこんなに崩れるのか、とちょっと衝撃を受けました。

だからといって「もう一生食べない!」などと言うつもりはないのですが、少なくとも「これを食べるなら、じゃあ夕飯でちょっと脂質を調整して」という意識が働くことになります。一時期話題になった「レコーディング・ダイエット」と同じですね。何かを食べることで、それが全体にどう影響するかが具体的なイメージとなって腑に落ちるのです。そうすると不思議なもので「じゃあ今日はこれ食べるのやめとこっと」と自然に自分を納得させられるんですね。これは計算をやってみて初めて湧いた感情でした。すごく新鮮です。

これはなかなかよいと思いました。無軌道に無制限に食べていたら太るし健康も害しますよね。どこかで「ちょっとご褒美」的に不摂生をしたら、その分をどこかで「回収」しておく。そういう意識が自然に持てるのが、この本とウェブサイトから学んだ最大の収穫でした。