インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

つぎはぎ

  通訳スクールの宿題で日→中翻訳にとりくんでいるのだが、日本語の原文がなんだかおかしい。行間から明らかに「翻訳臭」が漂ってくるのだ。
  この原文は、とある大手全国紙の関連会社が経営するネットメディアから取られたもので、某氏の署名記事になっている。記事に関係あるサイトのアドレスが示されているほかは出典や引用の記載がないから、同氏のオリジナルということになる。
  けれど、試みに記事中のテクニカルタームをいくつか拾ってgoogleでand検索すると、段落によってはそっくりそのままの中文が見つかる。中文の発表日時は同氏の記事より古いから、ここから翻訳して自分の文章に引用したのだろう。
  こんなに簡単に原文が見つかっちゃったら、翻訳課題にとりくむ意欲が失せるなあと(こらこら)思ったのだが、もしやと思って検索を続けてみると……果たして、文章のほとんどの段落が複数の中文サイトで見つかった。いずれも発表は同氏の記事より古い。つまり、いくつかの中文サイトから拾ってきた文章を翻訳して換骨奪胎し、ほんの少々手を加えて自分の署名記事に仕立てているのだ。
  ううむ、文章の一部を翻訳して、他の文章と自由に組み合わせることを前提に使用許可を出すなんてことがあるのだろうか。それはまああり得るとしても、出典や引用が一切記されず、できあがった本文のほとんどが引用で、しかも複数の文章から段落や、ときには文単位で順不同に組み合わせることを許可する原著者なんているのだろうか。
  同サイトの「著作権とリンク」にはこう記されている。

  掲載記事を引用するには、以下の条件を満たしている必要があります。
  1.報道・批評・研究など、対象記事を引用する必然性があり、その範囲についても合理性・必然性があること。
  2.引用先と引用部分に量的・質的な主従関係があること。通常、引用は自らの創作性のある文章に対し、補強材料とすることが前提であり、慣行上、引用部分が本文よりも短い必要があります。
  3.引用部分と本文が明確に区別できること。および、出所を明示すること。
  4.原文のまま取り込み、部分的な改変などを行わないこと。

  もちろんこれは同サイトから他へ引用する際の条件だが、他サイトからの引用をパッチワークにした上記の署名記事の場合、1〜4いずれの条件も満たしてないんじゃないかと(笑)。
  まあ、著作権は原著者が訴えてこなければお沙汰にならないそうだから、ひとさまの商売にあれこれ言うのはこれくらいにして、翻訳課題にとりくもう。すでに著しくやる気をそがれているが、自力で訳してあとで原文と照らし合わせるのも勉強になると思う。