インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

レセプション通訳

  民間団体主催による日中のスポーツ交流イベントで、その打ち上げレセプションの「式辞挨拶」、逐次通訳。
  式辞挨拶は型にはまっていてやりやすい側面がある一方で、自由な会話にはない独特のフォーマルさが要求されるので、私はどちらかというと苦手(^^;)。数日前に依頼されたこの仕事、精一杯準備だけはしたけれど、通訳の直前まで引き受けたことを激しく後悔する。フォーマルな物言いに、ひと言も通訳できずに立ち往生してしまったらどうしようとか、あられもないことを考える。まあ、これまで実際に通訳で立ち往生したことはないし*1、「本番」前におたおたするのはいつものことなんだけれど。
  今日のレセプションは、スポーツにあまり明るくない私でさえよく知っている某プロスポーツ選手を筆頭に、中国側は有名大学の教授や中国大使館の外交官、それに外務省の参事官まで出席していて、ものすごく緊張した。司会はこれもテレビで見たことのある某テレビ局の有名なアナウンサー。
  中国側代表の挨拶は、幸運にも事前に原稿が手に入り、まずまずの仕上がりに。まあこれは中→日方向の通訳だしね。問題は外務省や中国大使館の人たちのスピーチだ。事前に原稿が出ないどころか、今日どなたがいらっしゃるかも直前までわからない。結局外務省は中国課の方、中国大使館は文化担当の若い外交官がスピーチをされた。お二人とも日本語・北京語に暁通しているはずだ。やりにくいなあぁ〜(笑)。朝から痛かった胃が、さらにキリキリと痛みだす。
  外務省はなんとかこなし、次に中国大使館だが、このかた、最初に日本語で二言三言語り始める。だもんで、あちらが日本語を話して私が北京語で通訳をするという、かなりクロスオーバーな言語状況に。幸いそのあとは北京語での発言になったが。この外交官さんは、スピーチの最後に「きちんと訳してくれてありがとう」と言ってくださった。ふあぁぁ、ありがたいけど、やはり日本語がずば抜けて堪能な方たちだったわけね……何だか恥ずかしい。
  帰りの電車で、スーツの裏地を何気なく見てびっくり。私はあまり「ジンクス」とか「験担ぎ」とかを信じないほうなのだが*2、それでも勝負下着ならぬ「勝負スーツ」というのがあって、ここぞという通訳の本番にはそれを着ていく*3。今日も着てきたつもりだったのだが、よく見ると似た色とデザインの別のスーツだった。今朝、いかに本番を前にして動揺していたかがよくわかる(笑)*4。こんなに小心者で、これから先も通訳者などやっていけるのかしらん。

*1:何が何でも押し切り、訳し切る。それだけはインハウス通訳で自信がついた。

*2:いちいち気にしだすときりがないから。

*3:験をかつぎまくってるやん……^^;。

*4:それでもまあ、「勝負スーツ」でなくても本番は何とかこなせたわけだから、やはりジンクスなんて関係ないということの証明にはなったわけだ、うん。