インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

検査と歯型取り

  医院を決めて、最初の検査に臨む。
  まず歯と歯茎、それに唇の形を写真に撮られた。ファインダーの周囲にぐるっとドーナツ状のフラッシュが組み込んであるカメラで、いろんな角度から撮影される。先生は「はい、いいですよー」「もっといって(引っ張って)みましょうか」「いいですねー」「はい、あと数枚ねー」と間断なく語りかけてくる。なんだか「激写!」って感じ。その間私は透明なコテのようなものを両手に持たされ、自分の唇をぐいーっと引っ張る。目の前に鏡があったら、かなりおバカな表情で落ち込むことだろう。
  次にレントゲン。鉛の重いジャケットを着てあい対するは、頭蓋骨だけを撮影するのに特化した特殊なレントゲンの機械だった。口で器具の先端を噛んだり、耳に固定用の器具を入れられたりしながら、これもいろんな角度から「激写」される。恐くて目をつぶっていたのだが、頭の周りで「みゅ、みゅい〜ん、かたかた」などというSFチックな音が響いていて、これはなんとなく『マトリックス』か『トータル・リコール』って感じ。あくまでイメージだが。
  レントゲンのあとは、歯型取り。下の歯列に冷たい粘土のようなものが乗ったと思ったら、次の瞬間でっかいマウスピースのようなものが押し込まれて、先生の両手でぐいーっと押しつけられる。思わずえづいてしまったが、そのまま身を固くすること一分半ほど。すぐに粘土も固まって、がっぽっ……と外されたそこには歯型がくっきりと。
  先生は「引き続いて上の歯にいきます。上は歯の範囲が広いので粘土も三割増しになりまーす」……って、あまりうれしくないが。で、またえづきながら一分半ほど。上の方が少々きつくて涙にじんじゃった。
  次に薄い粘土板のようなものをがっちりと噛んで数分、裏表に歯型をつける。この粘土板によって上下の歯型がきちんと噛み合わさるわけだ。なぜか「朱印船貿易」という言葉が脳裏に浮かぶ。あとから思ったが、それを言うなら「勘合貿易」だろう。初めての経験でちょっと動揺していたようだ。
  最後にロッテキシリトールガムを二分間噛むように言われる。これは噛む力を測定するために開発された特殊なガムだそうで、最初は緑色なのだが、噛み終わりはピンク色になっている。ピンク色の濃さで噛む力がわかるそうだ。私は濃いピンクになっていて、「けっこういいですね」ということだった。
  これで検査は終わり。次回は検査結果をもとに、治療方針を相談するのだそうだ。