インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

義父と暮らせば4

先週、九州の実家に帰省してきました。年末年始を避けて早めの里帰りです。

お義父さんを四日間ほど一人にするので、細君は担当のケアマネさんや民生委員さん、それにご近所や比較的近くに住んでいるお義父さんの弟や、はてはすでに他界しているお母さんのかつてのお友達にまで声を掛けていました。何かあったらすぐ連絡してもらえるように、そしてできることなら声かけ程度でいいから様子を見てくれるようにと。

食事も朝晩は何とか簡単なもので済ませてもらうことにして、ご飯をいっぱい炊き茶碗一杯分ずつラップして冷凍、味噌汁はインスタントの美味しそうなやつをどっさり買ってきました。加えて夕飯は、初めて配食サービスというのを利用することに。一食単位でお弁当を自宅まで届けてくれて、同時に様子見の声がけも行ってくれるというサービスです。安全を確かめるために、お弁当を直接本人に手渡すというのが原則なんだそうで。

う〜ん、細君はなかなか周到ですね。私など、まだまだ元気だし「要支援1」だし、何もそこまで心配しなくてもいいんじゃないの……と内心思っていたくらいです。お義父さん自身も、何となく「そこまで心配してくれんでもいいわ」的表情でした。でもまあ確かに、同居してお義父さんも気が緩んでいることでしょうし、最近の行動を見ていると火の取り扱いなどは若干不安が感じられますし、気をつけるに越したことはないなと。

結果はまあ、何事もなく四日間が過ぎました。お母さんのお友達は差し入れを持ってきてくれたようですし、ご近所さんも何かにつけ気に掛けてくれていた様子。もっともお義父さん自身は、配食サービスの弁当が不味くて冷えてて量が少なかった、インスタントの味噌汁なんて飲めたもんじゃなかった……と、かなり不満だったようです。帰省から戻って、その晩はあたふたと鍋にしたんですけど、「ああ、やっぱり手作りはいいなあ」と言ってました。弁当もカロリーや塩分などに気を使った手作りだったんですけどね。カロリーや塩分に気を使った料理って、得てして美味しくないこともあるよね。

帰省して私の両親に会ってきましたけど、細君との一致した意見は、年齢は五つ違うだけなのに立ち居ぶるまいというか身のこなしが全然違う! ということでした。私の両親もかなり弱って来たなあと思っていましたが、お義父さんの普段の動きに比べると、かなり生き生きしているのが分かります。歩き方も、しゃべり方も、音や映像に対する反応なんかも。こういうのって、比べてみて初めて分かるんですね。

いや〜お義父さん、かなり身体が弱ってるわ……医者からもできるだけ身体を動かすように言われているので、ケアマネさんの勧めもあって、介護保険を使って機能回復・筋力向上系のデイサービスを利用してみることにしました。で、今日、早速いくつかの施設を見学してきました。

初めてこういう施設を見ましたが、地域のあちこちにあるんですね。このあたりはお年寄り人口が多いからね。でもって、地域の小さな診療所や整骨院なんかがそういう事業を請け負って様々なサービスを展開している由。ストレッチやったり、チューブ運動やったり、発声練習やったり、簡単なゲームをやったり。私も一緒にやらされましたが、結構な運動量です。自宅までの送迎つきで月に(要支援/要介護の度合いにもよるけど)数千円程度の負担。介護保険で一割負担です。ということは……けっこうな金額です。個人でジムやプールに行ってもそんなにはかからないですからね。

見学したところはどこも明るい雰囲気で、トレーナーさんもすごく親切でした。やや営業的なトークもあったところを見ると、多少の、いや、かなりの競争原理も働いているようです。もちろん、それぞれの施設がサービスに工夫を凝らしてお年寄りを集めてるんですから、それを否定はしませんけど。

う〜ん、でも正直なところ、自分が年老いたときに、できればこういうサービスを活用するような状態になりたくはないな、と思ってしまいました。んなこと言ったって現実的には寄る年波には勝てないんでしょうけど、できれば自分で自分を管理して、なるべく家族や他人や行政のお世話になりたくない。身体も、それからアタマも。地域で助け合うのは素晴らしいことだし、介護保険料だって払ってますけどね、それでも。

まずは仕事をできるだけ続けること、あと、適度な運動を心がけようと改めて思いました。さいわい今のところほとんど唯一の趣味である能楽は、舞と謡でアタマも身体も使いますからその一助にはなると思います。それにしても、こういうことを考えるトシになったのだなあと。

昨日、やはり同年代の親を持つかつての同僚からメールをもらって、そこにはこう書かれてありました。

長らく一人で自由に生きてきて、一人だからこそ耀いてた老師が家庭のことに煩わされることには、私だけでなく周りの友人皆が心配していることと思います。でもそこは老師、次々と新たなソリューション!を見つけて行かれることと期待しています。

うん、まあね。これまでも自由気儘に生きてきたつもりはないし、いまも家庭に煩わされているという気持ちじゃなかったつもりなんですけど、でも、妙に心のツボにはまるメールでした。というか、なかなか鋭いところを突かれたなあと。親の面倒を見る年齢になって、でもまだそれを完全に引き受けきっていない自分を見透かされたような気がしたのです。