インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

新年度を控えて途方に暮れる

2020年度が終わります。私の職場は学校なので、仕事の区切りは毎年4月から翌年3月までの1年間で、明日からは2021年度の仕事が始まります。先日は、コロナ禍への対応に明け暮れた2020年度の苦労をねぎらおうということで、職場の同僚と乾杯しました。とい…

ロジカル筋トレ

筋トレをしているとき、そのトレーニングが「効いている」か「効いていないか」が分かることがあります。効いているときは、鍛えた身体の部位が「じわーっ」と疲労しているのが感じられたり、見た目にもその部位が張って膨らんでいたり(いわゆる「パンプア…

国立能楽堂の楽屋

東京は千駄ヶ谷にある国立能楽堂。これまで能の公演を見に来たことは何度もありますが、楽屋に入れていただいたのは初めてです。五月にここで温習会(発表会)があり、今日はその申し合わせ(リハーサルのようなものです)があるのです。楽屋は広々としてい…

見るレッスン

映画評論家でフランス文学者の蓮實重彥氏が、ご自身でこれが最初で最後だとおっしゃる新書による執筆。映画史に関する「講義」ですが、これがめっぽう面白かったです。蓮實氏の本といえばどこか重厚なイメージが私などにはありますが、この本の語り口はいた…

フィンランド語 93 …日文芬訳の練習・その25

先日、札幌地裁で、同性婚の否定は違憲とする判断が示されました。G7の中で唯一同性婚が認められていない日本においては画期的な判決です。約十年前に、ニュージーランドの国会でこの件が議論された際、モーリス・ウィリアムソン議員は「この法案が可決され…

「この世には本当にバカがいるもんだ」をめぐって

カズオ・イシグロ氏へのインタビュー記事が話題になっていました。toyokeizai.net ブレグジットにしても、トランプ主義の台頭にしても、中には半分ジョークを交えながら、「この世には本当にバカがいるもんだ」と怒る人もいます。しかし、私たちはその先にあ…

「LOUIS VUITTON &」展

表参道のルイ・ヴィトンは一種の美術館だから、ぜひ定期的に見に行くべきーー。ずっと以前にどこかのブログでそんな意見を見かけて以来、何度か足を運んでいます。私自身はこのブランドの商品を買ったことはありません(というか、高すぎて買えません。ごめ…

「煮豚の牛肉版」ローストビーフ

筋トレを始めて三年あまり、体格はそれなりに良くなってきた……と言いたいところですが、中高年男性特有の「ぽっこりお腹」はあまり変わっていません。これではいくら筋肉をつけても体格の「コントラスト」がつかないではないですか。残念すぎる。というわけ…

その語学における勘所みたいなもの

先日フィンランド語教室のオンライン授業に参加しようとZoomで待機していたら、いつも授業が始まる前に映っている共有画面にこんなことが書いてありました。 1.単語:単語を覚える。 2.文法:言語の仕組みを理解し、どの語形になるかを知る。 3.語形変化…

プロに対する「タダでお願い」について

イタリア語通訳者のMassi氏が、こんなツイートをされていました。日本企業からテレビ会議通訳の依頼があり、イタリアと日本と通訳者でZOOM会議をする予定。コロナの影響で厳しい日々が続いていて、通訳者は家でやってもらうため、経費や準備は不要で30分もか…

フィンランド語 92 …日文芬訳の練習・その24

最初「記事が載っていた」という部分を「記事を見た」ということで“Minä katsoin”としていたのですが、普通は“Minä luin”と動詞“lukea”を使うということで直されました。なおかつ「その記事にはこう書かれている」というのも“Siinä lukee”(そこにそう読める…

料理レシピの文体

なぜ料理本やレシピの説明文は命令形ではないのか。英米文学者で文芸評論家の阿部公彦氏のこんなツイートに接しました。たとえば、ですね。以下。「豚肉のしょうが焼き」 1.豚肉に下味(しょうゆ、酒―各大さじ1。しょうがの絞り汁―大さじ1/2)をまぶし、…

BTSとARMY

先日卒業式を迎えたばかりのアルゼンチン人留学生が、進学先の大学に提出する書類の手続きか何かで学校の事務局に寄り、教員室にも顔を出してくれました。彼女はK-POPの熱狂的なファンです。特にBTS(防弾少年団)が大好きで、選択科目で韓国語を履修してい…

同性婚も選択的夫婦別姓も

同性婚の否定は違憲とする初の司法判断が示されました。G7の中で唯一同性婚が法的に認められていないとされる日本においては画期的な判断です。もっとも、これだけ世界の人権意識に関する潮流から後れを取っている私たちの日本は「G7=主要七カ国」の一員だ…

Dr. Capital氏が解説する「BON DANCE」

いつもYouTubeで楽しみにしながら視聴している、Dr. Capital氏の音楽解説。最新作はmillennium paradeの「BON DANCE」でした。millennium parade の BON DANCE - Dr. Capitalいやあ、いいなあ、これ。私は常々、ポップスをはじめとする歌詞のある音楽って、…

「ちんぷんかんぷん」をめぐって

Twitterでこんなツイートを読みました。#欧米 では、といいますが、欧米内でも各言語によって”Greek”に当たる「難言語」は違うのです。#スペイン語 では「#中国語」だし。#現代ギリシャ語 では #アラビア語 のようですが、#古典ギリシャ語 ではなんだろう?β…

フィンランド語 91 …日文芬訳の練習・その23

酔漢 (id:suikan)さんのお勧めに従って、ストッケ(ヴァリエール)のバランスチェアを買いました。フィンランド語では“polvituoli(膝椅子)”と言われているようです。「とはいえ両腕が疲れるので」という部分を最初“Käsivarret olivat kuitenkin väsyneitä”…

還暦以上は口を出すな

宮城県女川町中心街の復興に際して、町会長がおっしゃったという「還暦以上は口を出すな」。テレビの報道番組を見ていたらこんな言葉が紹介されていました。復興計画では、10年前の大津波のような災害が再び起こったときに備えて、巨大な防波堤などを建設す…

母語話者に母語方向の訳出を教えるプレッシャー

通訳や翻訳の授業で、自分の母語方向への訳出を教えるのは大変だーーそんな一種の「お悩み」を、中国語母語話者の先生方から聞きました。学年末に例年開催している教師ミーティング(反省会)でのお話です。私が勤めている学校のうちのひとつは、学生さんが…

フィンランド語 91 …分詞構文

教科書は新しい課に入って、「分詞構文」という文法事項が出てきました。これは書き言葉で圧倒的に多く用いられるものだそうです。分詞構文は二つあって、現在分詞の分詞構文と過去分詞の分詞構文をそれぞれ習いました。この構文は、口語では“että(英語の関…

2011年3月11日のツイート

「3.11」から10年ということで、報道各社が特集を組んでいます。新聞やテレビなど、数日前からそうした報道特集のいくつかに接してきましたが、当時を思い出して様々な感慨にふける一方で、どこか違和感のようなものも拭えませんでした。特に「復興」とか「…

校則で下着の色を決める?

先日Twitterで見かけて、思わずリツイートしてしまったこちらのツイート。そのうち自分の子供が中学に上がるときに、「校則で下着は白と決まってます」と言われたら、入学説明会で「先生のパンツは何色ですか?」「教師らしくブリーフですか?」「下着は白に…

腰痛は能のお稽古で治す

週末に自堕落な生活態度で読書三昧していたら、ひどい腰痛がぶり返しました。ちょっと歩いていても「カクッ」と腰折れしてしまいそうな勢いです。こういうときは、とにかく安静第一……ではありません。腰痛は動かして治す! 受け身の安静や湿布薬やマッサージ…

烟囱漫画集

美術を学んでいた頃、石膏デッサンが嫌いでした。西洋の古典的な彫刻の一部をかたどったもの……にコピーにコピーを重ねて、まるで室温に30分ほどおいたバターみたいに形の輪郭が緩んだ石膏像を、木炭や鉛筆で描くアレです。絵画や彫刻を志す者であれば必須と…

フィンランド語 90 …「文法訳読」が楽しい

フィンランド語の先生が「フィンランド語の文章は、『簡単/難しい』という区別がなく『できる/できない』という区別があるだけです」と言っていました。とにかく語形の変化が激しいこの言語は、どんなに単純な文章であっても規則通りに変化が起こり、その…

フィンランド語 89 …日文芬訳の練習・その22

作文に書いたこの質問は本当に何度かしたことがあります。けっこう「とんがった」華人留学生でも、こと両親や家族のことになると、とっても親孝行&家族思いなんですよね。結婚観や子供を持ちたいかどうかについても、日本の若い方々に比べると「保守的」の…

東京の都心を歩く

街の風景や建物を見ていて、ときどきとてもはかない気持ちになることがあります。「世の中はこんなに複雑で豊穣で、ずっと昔から続いてきて、これからもずっと続いていくのだろう。この風景や建物だって自分が死んだ後もある程度はここに残り続けるのだろう…

「常在戦場」ってこういうことかしら

コロナ禍の不安におびえながらも、お能の稽古を続けています。五月に国立能楽堂で発表会がある予定なのですが、その頃感染状況はどんな感じになっているでしょうか。最悪、延期か中止になることもあるかもしれません。あるいは「無観客に」……? 不安の種は尽…

ペーパーフラワー作りが感慨深い

コロナ禍への対応に明け暮れた一年。早いもので、もう学年末、卒業式のシーズンが迫ってきました。思い起こせば一年前の今頃も、もうコロナ禍の影響が出ていて、学校全体で行う卒業式は中止に。でもそれじゃ卒業生があまりにかわいそうだからというので、私…

「○○先生の授業は準備不足ではないか」という声に対して

勤め先の学校は学年末ということで、学生のみなさんにアンケートを取っています。今年一年の学習を振り返って、授業のどんなところが役に立ったか、逆にどんなところが役に立たなかったか、教材についてはどうか、教師については……と、無記名で忌憚のない意…