インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

「マシン」と「フリーウェイト」の違い

ジムとかフィットネスクラブに通ってらっしゃる方はご存知だと思いますが、こうした施設、それも規模の大きな施設にはおおむね三つから四つくらいのエリアがありますよね。筋トレなどを行う「ジム」、水泳などを行う「プール」、ヨガやエアロビクスみたいなのを大勢が一斉に行う「スタジオ」、そしてトレーニング後に汗を流す「スパ」です。

私はもっぱら「ジム」と「スパ」ばかり利用しているのですが、この「ジム」にも私見では特徴が大きく異なると思われる二つのエリアがあります。それが「マシン」エリアと「フリーウェイト」エリアです。ジムといえば奇妙な形をした様々な「マシン(器械)」がずらっと並んでいて、体の部位ごとに鍛えられるようになっています。肩を鍛えるもの、胸を鍛えるもの、背中を鍛えるもの……中には、内股だけを鍛えるものとか、上腕の後ろ側だけを鍛えるものといった特殊なものもあります。あと、ランニングマシンみたいなのもありますね。

十年以上前、とあるフィットネスクラブに通っていたときは、「ジム」の「マシン」のみを使ってトレーニングをしていました。でも、まったくの自己流だったこともあって、一年半ほど通っても運動不足解消という程度でほとんど効果がなく、筋肉もつかなければお腹も凹みませんでした。そのフィットネスクラブにも「フリーウェイト」エリアはあったのですが、当時の私には怖くて異様な(失礼)場所に見えました。

なにせ「もうそれ以上鍛えなくてもよかないですか」と言いたくなるくらい筋骨隆々とした、しかも尋常じゃないほど日焼けした肌の、それもピタピタのタンクトップ or ブカブカのタンクトップ(乳首見えてる)とボクシングのチャンピオンベルトみたいなぶっといベルトをお召しになった方々が「はぁっっっ!」とか「ふんぬっっっ!」などの奇声を上げつつ、これまた尋常じゃないほどのウェイトを持ち上げていらっしゃるのです。そのフィットネスクラブの「主(ぬし)」的な方々が集っていて、とてもじゃないけど近づけない雰囲気でした。

しかも「フリーウェイト」は、単にダンベルやウェイトがずらっと並んでおり、自分でバーなどと組み合わせてウェイトを決め、使うので、素人にはどうやって使ったらいいのか、どのくらいの重さを選べばいいのか、まったく分かりませんでした。フィットネスクラブのスタッフや「フリーウェイト」エリアでトレーニングしている方に聞けば教えてもらえたはずですが、極度に人見知りな私は、前述の異様な(たびたび失礼)雰囲気も相まって、ついに足を踏み入れることはありませんでした。

f:id:QianChong:20191214185604p:plain
https://www.irasutoya.com/2018/10/blog-post_49.html

それから随分経って、男性版更年期障害とでもいうべき不定愁訴に悩まされ続けた結果通い始めた「治療院兼ジム」のパーソナルトレーニングで、こうした「フリーウェイト」エリアにある器材の使い方をひとつひとつ教わりました。教わってみて初めて分かったのですが、こうしたウェイトは単に上げ下げすればいい、動かせばいいというものではなく、実に細かい注意すべきポイントや使い方のコツのようなものがたくさんありました。

そしてウェイトトレーニングは、それも私のような中高年のそれは、重さよりもむしろ使い方、つまりフォームが一番大切なのだということも分かりました。正しいフォームで使わなければ、効果が少なく筋トレにもならないのだと。こういうことは、やはりプロに教わらなければ分からないんですね。市販の筋トレ本などでも細かい記述がありますが、個人的にはあれではとてもじゃないけど正しいフォームを理解できないような気がします。トレーナーさんがそばにいて「今はここを意識して、こう動かしてください」と身体の部位に触れてもらいながら教わることが必要なのです。

そうやって正しいフォームを覚えた上で、フィットネスクラブの「マシン」に戻ってみると、面白い発見がありました。「マシン」では、正しいフォームが作りにくいのです。器械の種類にもよりますが、例えば「フリーウェイト」のベンチプレスと同じような荷重を再現する器械では、肩甲骨を寄せ、脇を締め、胸の中心に向かって絞るように押し出す(これ、言語化するのがかなり難しいです……)といった一連の動きがしにくい。それをパーソナルトレーニングのトレーナーさんに言ったら「そうですね、まあ器械は誰でも簡単に使えるよう設計されている反面、細かいフォームの調整はやりにくいかもしれません」というお答えでした。なるほど。

そういう視点でトレーニングの合間に周囲の方を観察してみると、マシンを上手に使って効果的な負荷のかけ方をされている方もいれば、そのマシンで狙うべき筋肉にほとんど負荷がかかっていない方もいます。そう、プロのトレーナーでも何でもない私にさえ、人さまのフォームの良し悪しが分かるようになりました。これはやはりトレーナーさんについてもらいながら「フリーウェイト」で筋トレを続けてきたからだと思います。

SNSなどでのポジティブな発言で人気の Testosterone(テストステロン)氏は、確かその著書で「ボールはともだち(©︎キャプテン翼)」ならぬ「ダンベルはともだち。人間は裏切ることがあるが、ダンベルは裏切らない」という至言を残されていたように記憶していますが、ホント、その通りだなあと思いました。「フリーウェイト」エリアのダンベルやバーベルを使っての筋トレには重力だけが厳然と立ちふさがって逃げ場がないですけど、「マシン」エリアの器械には逃げ道がけっこうある(筋肉に効いていないトレーニングができてしまう)からです。