インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「八年生まで待とう」運動

先日新聞で、「八年生まで待とう」という運動を知りました。アメリカで広がりつつある、子供が八年生(十四歳)になるまでスマートフォンを持たせないようにしよう、という運動だそうです。

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子供がスマホを持つことの是非は日本でも論じられていますが(記事にもある通り、先日も小学生がスマホSNSを通じて知り合った男性による監禁事件が報じられていました)、こうやって具体的なムーブメントとして立ち上がり、それが静かな共感を呼んでいるという点、そしてそれが取りも直さずスマホや各種ネットサービスを生み出してきたアメリカで展開されているという点が興味深いと思いました。

記事によれば、故スティーブ・ジョブズ氏をはじめ、IT業界の名だたる有力者たちがその子供たちにはIT機器の使用を制限しているとのこと。なるほど、先日読んだ『デジタル・ミニマリスト』でも触れられていましたが、IT機器、とりわけスマホやパソコンからつながるネット上のウェブサイトやSNSなどが、「注意経済(アテンション・エコノミー)」と称される仕組みで莫大な利益をあげる一方で、ユーザーが自律的・自発的に思考や想像をめぐらせる力を奪っているという事実。それを一番良く知っているのは、当のIT業界の人々だというわけです。

www.waituntil8th.org
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興味深いと思う一方で「ちょっとズルい」とも思ってしまいました。だって、さんざっぱらIT機器を売って儲けておきながら、その負の側面は伝えない一方で、自分の身内は遠ざけさせていた、というのですから。かなり以前のことですが、某加工食品会社の社員は、自社製品に入っている食品添加物の功罪をよく知っているから自分の家族には自社製品を食べさせない……という話を聞いて憤慨したことを思い出しました。

それでもこうして、何が子供にとって良いのかを自分の頭で真剣に考え、行動に移すというのがアメリカ社会のすごいところだと思います。そして子供や家族が孤立しないよう仲間作りから始めるというのも面白い。こういうやり方は、とりわけ同調圧力の強い日本でも有効かもしれません。

日本でも、子供に携帯電話を持たせる前によく考えようという呼びかけは、当の通信会社からもなされています(例えばこちら)。ただそれは、おおむねセキュリティ関係、つまり防犯とか有害サイトのカットといった側面がほとんどで、上述の記事にもあるような、家族との会話や読書経験を豊かにするため、という視点は少ないのではないかと思います。

それだけにこの「八年生まで待とう」という運動が興味深いなと思った次第です。日本でも、より人生を豊かにするために「スマホは高校生まで待とう」というような運動があってもいいですよね。