インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「我が国の伝統」ってなに?

天皇と皇后のお二人が、即位に関する一連の儀式が終了したことを伊勢神宮に報告する「親謁の儀」が行われたという報道に接しました。

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https://iseshima.keizai.biz/headline/3350/

天皇陛下は「黄櫨染御袍」に「立纓御冠」「御挿鞋」を身に着け、儀装馬車にお乗りになり親謁の儀に臨まれた。

約三十年前に行われた同様の儀式の際にも思ったんですけど、こうした伝統装束を身にまとって儀装馬車に乗るというの、どなたも違和感を覚えないのかな。だってこれは明らかに西洋風の馬車ですから、とんでもなくちぐはぐな印象を受けるんです。後ろに乗っている従者(?)のようなお二人の服装もかなりクラシックな西洋風ですし、こう言っては大変失礼ですが、珍妙極まりない画に見えます。

まあだからといって例えば「牛車(ぎっしゃ)」に乗るというわけにも行かないんでしょうし、そもそも皇室行事のかなりの部分が「伝統伝統」と言いながらも西洋風の伝統を折衷して取り込んでいるので(通常の公務は大概洋服ですよね)、いまさら「それがどうした」ってことになるんでしょう。でも、ふだん声高に日本の伝統を守れと叫んでいる方々など、この写真を見て憤慨することしきりなんじゃないかと心中お察し申し上げる次第です。

もっともそれを言うなら「袍」や「冠」だって、もともとは中国大陸由来なんですけどね。こういうふうに何でも取り込んで自家薬籠中の物にしちゃうのが日本の無節操かつとても良いところで、例えば「餅入りチーズキムチもんじゃ」とか「和風フォアグラ丼」みたいな素晴らしいクロスオーバーっぷりを発揮しているんですけど、だったらその分、ふだんからあんまり「我が国の長きにわたる伝統」とか「美しい固有の文化」とか強調するのはよしましょうよ、もう少し慎みというものを持ちませんか、と思います。