インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「日本人は勉強しない」をめぐって

フィンランド語の教室で、先生がこんなことをおっしゃっていました。「別の学校でフィンランド人の先生とペアになって隔週で授業を担当しているのですが、その先生がよくこう言うんです。『日本人はホントに勉強しない』って」。非常に興味をそそられました。詳細までは聞けなかったのですが、要するに「教室にマジメに通っては来るけれど、家での復習や練習をぜんぜんやらない」ということなのだそうで。

おお……まあこれは、何も日本人だけというわけじゃありませんが、私も日本人の生徒さんを対象に語学を教えてきた経験からすると、確かに家での復習や練習、言い換えれば教室以外での不断の努力というものをあまりなさらない方はままいらっしゃいます。まあ学生さんたちは他の科目やアルバイトなどで忙しいですし、社会人のみなさんも長時間労働や長時間通勤で疲れ切ってらっしゃる。いきおい、語学の教室に通ってきたときだけ勉強する……ということになるのでしょうか。

しかしですね、あまたの語学の達人が言っていることですが、語学、というか外語の習得にはそれなりの時間と手間暇をかける必要があります。世上よく「中学・高校・大学と都合十年も英語を学んできたのに、ちっとも話せやしない。これは教師が悪いんだ、メソッドが間違ってるんだ」ってなものいいがありますが、私に言わせればそうおっしゃる方の九割九分九厘までは「十年も英語を学んで」いないです。週に数時間英語の授業で英語に触れたからといって、それを「十年学んだ」というのは盛りすぎでしょう。

語学学習には個人差、さらに向き不向きもありますから一概には言えませんが、ひとつの外語をそれなりに使える(その言語を使って仕事ができる程度)ようにするには、膨大な時間と努力が必要です。教室に通っての学習以外にも、日々の暮らしの中で不断に学習し続けなければなりません。逆に言えば「こんなに手間暇のかかることに人生のかなりの時間を費やしてもいい」と思う方だけが語学に取り組むべきだと思います。全国民が、幼少時から英語に狂奔し、狂奔させられるという昨今のありようは、なにか別の大きなものを失っているような気がしてなりません。

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https://www.irasutoya.com/2018/09/blog-post.html

フィンランド人の先生が「日本人は勉強しない」とおっしゃったのは、いみじくもその現状をあぶり出しているような気がします。要するに多くの方が、本当はそんなにその語学を必要とはしていないんです。もちろん語学を趣味で細々と勉強するのも「アリ」ですけど(私だってフィンランド語は単なる趣味です。中国語だってはじめは趣味でした)、その一方で、単語や活用を覚えてきてと言っても覚えてこない、ロールプレイをしてみましょうと言っても極めてローテンションであるなど、生徒さんが「打っても響かない」ことに、熱心かつ誠実な先生ほど心痛めているんですよね。「日本人はホントに勉強しない」と吐露されたそのお気持ちは、本当によくわかります。