インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

よーく考えよう、お金は大事だよ。

新聞の朝刊を読んでいたら、こんな保険の全面広告が載っていました。新聞の広告は、その読者層を如実に反映してか、もはやお年寄り向けの健康食品・アンチエイジング・強精&回春・団体旅行・保険などなどばかりでうんざりしてしまうんですけど、この「月々ワインコインでお葬式代程度の保険金がもらえる死亡保険」というのはなかなかにインパクトがあります。

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隅のほうに小さな文字で書かれていますが、この保険は保険期間が1年間の掛け捨て型で、保険料は5歳刻みで変更になるとのこと。ワンコインというキャッチフレーズが有効なのは50〜54歳の女性だけで、その後は年齢が上がるほど保険料も上がっていくのですぐに「ワンコイン」じゃなくなっちゃいます。それはまあいいんですけど、私が興味を引かれたのは、これが保険会社にとってものすごくおいしい商品だなと思ったからです。

例えば現在の私が「大した蓄えもないし、いま自分が死んだらお葬式代も出せないな。よし、月々わずかの出費で万が一に備えられるなら」と毎月880円を払ったとしますよね。これは50〜54歳男性の月々の保険料です。一方で、この年代の男性の死亡率はというと、ちょうどうまい具合に厚生労働省の人口動態統計が五歳階級別に公表されています。ウェブサイトで誰でも見ることができます。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h5.pdf

これによると、最新の統計である平成30年における男性50〜54歳の死亡率(概数)は10万人あたり303人。つまり、仮にこの年代の10万人が保険に加入したとしたら(実際にどれだけの加入者がいるかは知りませんが)保険会社には1年間で10億5600万円(880円×12ヶ月×10万人)が入るのに対し、加入者の死亡に際して支払われるであろう保険金は3億300万円(100万円×303人)で、還元率は約29%です。宝くじの還元率が約45%、競馬は約75%などと言われますけど、それらに比べてもかなり低いですね。

同じように考えると、この広告に載っている死亡率が最も高い年代の60〜64歳男性でも還元率は約38%。もちろん保険会社の人件費や広告宣伝費など様々な要素は省いていますし、実際の収支はもっと複雑ですから、これはかなり単純化した計算ですけど。こんなギャンブルに手を出す方がいるのかしらと思いますが、保険会社がこうやって新聞に高額の全面カラー広告を打てるくらいですから、けっこう多くの方が手を出してらっしゃるのでしょうね。

作家の橘玲氏はブログで「年金で生活できる高齢者に保険は必要なく、金融リテラシーの高いひとはそもそも保険に加入しません」と書かれていました。私は金融に関して「リテラシー」と呼べるほどの知識はほとんどありませんが、それでも民間のこうした保険には一切加入していません。そして、新聞でこういう広告を目にするたび、なにかこう、とても落ち着かない気持ちに襲われます。老後が不安だからではありません。知識を学ぶことの大切さと難しさをいまさらながらに痛感させられるからです。