インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

しまじまの旅 たびたびの旅 99 ……中央フィンランドならではの風景

カヤックツアーのガイドをしてくださった男性が、帰りがけに地図をくれて「もし時間があったら、このハイキングコースに行ってみるといいよ」と教えてくれました。風景がとてもきれいなんだそうです。それで、スオネンヨキからクオピオに向かう前に行ってみることにしました。

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カヤックツアーの場所と同様、舗装されていない道をしばらく進んだ先に駐車場があって、そこからハイキングコースが奥に延びています。簡単な地図をもらっていたので「Kalajan Kierros」というコースを確認して歩き始めました。

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いきなり圧倒的なこの森林。ハイキング客もまったくいなくて、またもや圧倒的な静寂に包まれています。直線的に上に伸びる針葉樹、そここに横たわる古い倒木、樹の表面や岩にへばりつく苔などの地衣類、下草に混じって咲いている色とりどりの小さな花。この雰囲気……何かにそっくりだと思ったら、そうか、先日ユバスキュラの美術館で見た佐藤裕一郎氏の絵そのままなのでした。

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そのまま進むと湖があって、そばのコテージみたいな場所ではどこかのご家族がバーベキューをしていました。その光景を横目に木道が設置された湖畔を進むと、またもや圧倒的な森林。ほんの時たま、他のハイキング客とすれ違いますが、ほとんど誰にも会わず、何より木道やルートを示す矢印などの他に人工的なものが何ひとつ目に入りません。

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そういえば、ゴミが落ちているのを一度も目にしませんでした。みなさん必ず持ち帰るようにしているのか、国立公園の管理者がこまめに清掃しているのか。いや、たぶん前者ですよね。本当に、誇張ではなく、ハイキングコースの全てで何一つゴミを見かけませんでしたし、そもそもゴミ箱もありませんでした。そういえば日本でも確か「残していいのは足跡だけ」みたいな言い方がありませんでしたっけ。

やはり国立公園だから特別に厳しいルールがあるということもあるでしょう。でもここには私のような外国人も多数訪れるはず。その外国人もここでは「ゴミはきちんと持ち帰ろう」と思わせるような何かがあるように感じます。この圧倒的な美しい森を眺めていると。

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途中から「穏やかな山」という表示とともに上り坂になって……、いや、これは穏やかどころじゃない急峻な場所もありましたが、とにかく進んでいくと、山のてっぺんに出ました。山の上は大きな岩がたくさんあって、その岩の上から眺める風景は、森と湖が地平線まで織物のように交錯しながら広がっていて、これぞ中央スオミの湖水地帯ならではの風景です。思わずシベリウスの「Finlandia」の、コーラスの部分を思い出しました。

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大きな岩の上で、サンドイッチを作って食べました。

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ハイキングコースはところどころ木道や、あとかなり急峻な場所にはロープなどが設置されていますが、基本的には大自然を満喫しながら歩くことができます。小さなお子さんでも、ところどころ手伝ってあげればたぶん大丈夫(実際に小さなお子さんも見かけました)。中には犬を連れてハイキングしているご家族もいました。

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大自然の中で迷いそうになりますが、ハイキングコースの木々に黄色いペンキで丸い印がつけられていて、これを目印に進めば迷うことはありません。人工的な矢印などを極力使わず、木々に目印をつけるというの、大雑把と言えば大雑把ですけど、すごく控えめなやり方でいいなと思いました。

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全行程は4.6km、2〜3時間もあれば踏破できます。私のような初心者にもお勧めです。そして、何一つ取らず、何一つ残さずに去ることを心がけましょう。

砂利道を長時間走ると、車が泥まみれになります。というわけで、小さな街のガソリンスタンドで洗車をしました。洗車場の機械をどうやって使うか分からずにまごまごしていたら、そばにいた車のおばあさんが英語で「私が教えてあげるから、着いてきなさい」とガソリンスタンドのキオスキ(キオスク)へ。ここでチケットを買うシステムなんだそうです。おばあさんがあれこれ店主のおじさんに伝えてくれて(フィンランド語で「この人が車を洗いたいんだって」だけは聞き取れました)、その店主のおじさんもわざわざ洗車機のところまで出てきてレクチャーしてくれました。優しいなあ……。

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名刺入れくらいの大きさがあるプラスチックのチケットを買って、車を洗車機の中に入れ、チケットを機械に押し込んでボタンを押すと、洗車が始まりました。何だか我が子を眺めているかのような愛おしさ。10分ほどで「我が子」はピカピカになりました。教えてくれたおばあさんにお礼を言ったら「私も若い頃は英語をバリバリ使ってたけど、今はこの歳だからね」ですって。いえいえ、私なんかより百倍流暢でいらっしゃいます。本当にありがとうございました。