インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

「着るものについて学ぶ」のその後

絶望的にファッションセンスがないものの、ビジネスカジュアルで通勤するようになって以降、「制服」みたいに着られる定番のコーティネートを探していました。制服というなら毎朝ほとんど何も考える必要のないスーツを選べばよいのですが、はっきり申し上げて現代の日本はもはやスーツを着るような気候の国ではありません。加えて私は生来の暑がり+汗っかきなので、真冬かよほどのフォーマルな場面、あるいは通訳の現場でなければスーツは選択肢に入りません。

それでも、ワイシャツみたいなビジネスシャツにスラックスという組み合わせなら、暑くないしそこそこフォーマルだしコーディネイトに悩む必要もないので、ここ数年はそういう格好で仕事をすることが多くなりました。スーツカンパニーとかスーツセレクトみたいな比較的安価だけど比較的質のいいシャツやジャケットやパンツを買えるお店が、私のような人間にとっては救いになります。こうしたお店のターゲットはたぶん私の年代よりも一回りか二回り以上若い方々だと思われますが、だからこそ過度に「おじさんくさく」ならなくて重宝してきたのです。

しかし、それだけではだんだん飽き足らなくなってくるのが「下手の横好き」といいますか、ド素人の恐いところ。もうちょっとカジュアルな格好もしてみたくなってしまいました。しかしカジュアルウェアは私にとって「鬼門」です。なにせかつてパステルカラーのポロシャツに迷彩帽を合わせるようなファッションセンスだった人間ですから。しかも今思い出したけど、そのポロシャツには“Bisexual”とロゴが大書されていたのです。いったい何を考えていたのか、当時の自分を小一時間とことん問い詰めたいです。

閑話休題

そこで私が頼ったのは、前回ご紹介した大山旬氏の『おしゃれが苦手でもセンスよく見せる 最強の「服選び」』、そしてもう一冊『ユニクロ9割で超速おしゃれ』でした。

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ユニクロというと、特に「ユニクロ9割」とか「全身ユニクロ」というと、これはまさに「おじさんくささ」の代名詞ではないかと思われるかもしれません。ところが以前ならいざ知らず、ここ数年のユニクロ製品はかなり品質もデザインも秀逸だと思います(ファッション音痴の私が言っても説得力ゼロですが)。特に無地のTシャツやボタンダウンシャツ、ジーンズなどは、その数倍の値段がつけられている「なんとかアローズ」みたいなセレクトショップの商品と比べても遜色ないんじゃないかと思えるほど。

いっぽうでユニクロに代表されるファストファッションは、映画『ザ・トゥルー・コスト』でも指摘されているように、発展途上国の安価な労働力に支えられた大量生産・大量消費という側面を持っています。ですから安易にどれもこれもと買い求めて「9割」や「全身」まで行ってしまうのはいささか気が引けます。それでも安さとシンプルさに惹かれて、以前はけっこうなヘビーローテーションユニクロの服を着ていたのです。

ところが。

ユニクロってやっぱり若い方向けの服なんですね。いえ、中高年が着たっていっこうに構わないのですが(自宅ではいまでも着てます)、ユニクロの服が持っている雰囲気は、カジュアルさやそれがもう少し昂進したチープさが、若くて元気な方々の「ありよう」とうまく合致してプラスの雰囲気を醸し出している、そんな気がするのです。

逆に私のような中高年が着ると、その「ありよう=年齢感」みたいなものと若者的カジュアルさやチープさが不協和音を奏でているように思われます。それは体型や髪の毛の質感ゆえかもしれませんし、顔や皮膚の老け具合・皺の寄りぐあいとの齟齬かもしれません。うまく言語化できないのですが。

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https://www.irasutoya.com/2014/10/blog-post_47.html

以前、上述したスーツカンパニーやスーツセレクトで、若い人がよく着ているようなスーツを買ったことがあります。それは上着のラペル(襟の折り返し。会社のバッヂなどをつけてる方などがいる、あの部分です)が細くて丈はお尻がほぼ出るほど短めで、パンツは股上が浅めでぴったり目のサイズになっているものでした。買った時はとても新鮮な感覚だったのですが、実際に街で着てみたら中高年にはとことん似合わない……というか単に「イタい」ことが分かりました。

だからといって、おじさん感だだ漏れの、ダブダブスラックスにタックが何本も入っていて、股上はとことん深く、オーバーサイズでダブルの上着を着るのも絶対にイヤですけど……要するに、何事もほどほどが肝要で「過ぎたるは及ばざるがごとし」だと今さらながらに悟ったのでした。そして中高年のユニクロにもそういう一面があるのではないかと思うのです。

というわけで、現在はもうちょっと大人向け(?)なお店で買っています。するとやはりほどほどに落ち着いて、少なくとも「イタい」感じにはならずに済むようなのです。いやはや、ファッションセンスが全くないくせに、こうやってあれこれ服に頭を悩ませている私は、よほど見栄っ張りなんでしょうね。誰もアンタのファッションなんか興味持ってないよと言われそうですが、でも私、人はもちろん中身で勝負だけれども外見もけっこう大事だと思っているものですから……。