インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

着るものについて学ぶ

私はファッションセンスがありません。かつては美術大学で学んでいたのですが、その当時から現在にいたるまで、とにかく服のセンスがダメダメで、特に色彩感覚というか色彩のセンスが絶望的に乏しい人間です。なにせ、英語のロゴが大きく入ったパステルカラーのポロシャツに自衛隊がかぶってるような迷彩帽を合わせたりしてたんですから、いま思い出してもその衝撃のファッションセンスには戦慄が走ります。

そんなんでよく美大に入れたなと思われるかもしれませんが、入試はモノクロのデッサンだけだったのです。というか、入試で色彩を使って写生をしたり構成をしたりしなくていいので彫刻学科を選んだ……というのはここだけの秘密です。もっとも、彫刻だって実は色彩感覚が必要なのだということはあとから分かったのですが。

そんな人間ですから、実は制服が大好きです。制服って、軍服がルーツの詰め襟学生服やセーラー服を見ても分かるように、個人の自由を奪って文字通り一色に染め上げるようなもので、私個人の思想信条的には忌避すべきものの筆頭なんですけど、ファッションセンスがない人間にとっては一面救いでもあるんですよね。だっていちいち着るものに悩まなくていいんですから。

そうやって制服に救いを求めてきた心根が作用したのか、また生来の「いかつい」顔つきが後押ししているのか、私は「制服が異様に似合う人間」になってしまいました。詰め襟はもちろん、工場の作業着やサラリーマンのスーツ、白衣や割烹着、黒紋付+袴から高所作業用のヘルメットや安全ベルトにいたるまで、とにかく似合うのです。いや、自分でそう思うだけでなく、他人からも「似合うね〜」「様になってるね〜」とお褒めの言葉を頂戴するのです。

逆に一番苦手なのは、いわゆる「カジュアルウェア」というやつです。昨今はクールビズとかカジュアルデーとかいって脱スーツの動きが加速しており、私も、すでに温帯ではなく亜熱帯か熱帯というべき日本の夏にもはやスーツはあり得ないだろうと思っている人間ですが、じゃあ職場に何を着ていけばいいのか……ってところで、いつも悩みます。そしてそんな人間だからなのでしょう、服を買うのが苦手ですし、アパレル店の店員さんが苦手ですし、逆に服のおしゃれを楽しむすべを心得てらっしゃる方やファッションセンスのある方を心から尊敬しています。

いまメインで奉職している職場は、特に服装に規定はありません。だから他人(上司や同僚や学生)がどう思おうが、自分の好きなものを着ればいいのですし、人間は外観ではなく中身が勝負だと思っているのです……いや、この言葉にすでに大きな嘘があります。私は実は「他人にどう思われてもよいとは思っていない」のです。そして「人間は外観も(見た目も)けっこう大切だ」と思っているのです。そしてそして……どんなものを着ればいいのかが分からないのです。

というわけで私は、これまでいろいろな方に教えを請うてきました。プロのスタイリストさんにお願いしてコーディネートしてもらったこともありますし、「leeap」のようなネットのファッションレンタルサービスを利用したこともあります。が、いずれもお金がかかりすぎて(あと、やっぱり微妙に自分の好みに合わなくて——ファッション音痴でも「いっちょまえ」に好みはあるんですね)続きませんでした。

f:id:QianChong:20190515110937p:plain
https://www.irasutoya.com/2018/09/blog-post_775.html

ところが最近、この書籍を購入して、かなり勉強になりました。

f:id:QianChong:20190515111128j:plain:w200
おしゃれが苦手でもセンスよく見せる 最強の「服選び」

実はこうした書籍は類書がこれまでにもたくさん出ていて、私も例えば『最速でおしゃれに見せる方法』とか『成功する男のファッションの秘訣60』とか、マンガの『服を着るならこんなふうに』など片っ端から購入して読んできたのです(かなり恥ずかしいですが、いやもう必死ですね)が、どれも今ひとつピンときていませんでした。ところが上述した大山旬氏のこの本は、かなりシンプルな法則をベースに「頑張りすぎない(大山氏の言葉を借りれば『80点を目指す』)」服選びを指南してくれて、納得できる部分が多かったのです。

色はまずネイビーと白に限定し、「少数精鋭」でジャストサイズを選び、シンプルに徹してよけいな飾りや遊び心はひとまず脇に置くこと。そして大山氏ならではのアドバイスとして、試着した瞬間「似合わない」と思ってもそこで三分間待ってみることで「その服を着ている自分を見慣れていない」状態から抜け出すこと、また自分の服を人任せにせず自分の頭で考えて決めていくこと……。この本にはそうした一種の哲学が語られていて、服選びというのはなかなか楽しいものなんだなと思えるようになりました。

この本ではないのですが大山氏は別の著書で「生きている限り必ず何かを着なくちゃいけません」と述べています。そりゃそうだ。現実社会では裸で生きるわけには行かないし、着られりゃ何でもいいといったって、そこはそれTPOや清潔感など社会人として気をつけなきゃいけない部分もある……そんなことを考えながら、勉強しているところです。勉強して実践した結果分かったことというか失敗というか、ある種の気づきがさらにあったのですが、それはまた稿を改めたいと思います。