インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

まるで大晦日のような

新聞各紙の朝刊一面に載っているコラムは、文章のたいがいが情緒的で、特に最後を「ちょいと上手いこと」言って締めくくりがちなものですが、今朝の東京新聞「筆洗」は筆を洗いすぎたか薄墨色に過ぎるというか、情緒の含有量が高すぎてちょっと勘弁してほしいと思いました。元号が変わるからって、過去をきれいさっぱり水に流すみたいなのはよしとくれ、という感じです。

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新聞もテレビも今日は一日大晦日みたいなノリで、こういうふうに抑制が効かないところが私たち日本人なのかしらと思います。私の周囲でも少なからぬ方がみんな「平成最後」とか「令和もよろしく」みたいなことを言ってきて、それも日頃からけっこうこの方はものを考えてらっしゃるなあ、批判精神に富んでいるなあと尊敬している方も多くて、そのたびに驚き、溜息をついています。

だいたい天皇が「生前退位(譲位)」を希望されたのは、象徴としての務めを充分に果たすことができる者がその地位にあるべきという思いと共に、こういう朝野をあげての浮かれた騒ぎ、あるいは三十年前のような歌舞音曲の類い一切自粛みたいになることを極力抑えたかったというのもあるんじゃないかと思うんです。あれだけ忖度がお好きな方々も、こういうところは天皇の思いなどすっ飛ばして我も我もと改元騒ぎに乗っかっちゃう。

昨日所用で渋谷の街を通ったら、スクランブル交差点の辺りは規制の準備が進められていました。カウントダウンかなんかで盛り上がる人たちがどっと繰り出すと予想されているんでしょうね。昭和天皇が亡くなったとき、私はちょうど大学を卒業する年でしたが、あの時の自粛騒ぎの異様さをよく覚えています。あの時とは真逆のコントラストを示す今回の騒ぎも、長く記憶することになると思います。

……って、今日の自分の文章も情緒的で「ちょいと上手いこと」言って締めくくってました。私も軽い人間ですねえ。