インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

背景知識が後押しする訳出

こちらの動画、任天堂アメリカで『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ』というゲームをプレゼンテーションする「ツリーハウスライブ」の様子です。

youtu.be

この映像を見て、多言語コミュニケーションの新しい地平を見るような感覚にとらわれました。冒頭に登場する英語母語話者とおぼしきお二方の日本語力が素晴らしくて、司会者的な役割の方は自分の英語を自分で日本語に通訳しちゃうし、もうお一方は日本人ゲストの日本語をものすごいスピードで、なおかつ一切メモを取らずにテキパキと通訳しています。

ゲームの実況という特殊な状況ではありますが、日本語と英語が混在しているのに、ほとんど違和感がないと思いました。まるでそれぞれが自分の母語をしゃべりながら、それでいて自然に会話が成立しているような感覚なのです。通訳者や翻訳者はよく「黒子」などと言われ、字幕翻訳などでもよく「外国語で視聴していた気がしない」ほどさりげなく自然に、かつ的確に日本語で伝えるのがいい字幕、などと言われます。この映像にも同じような雰囲気を感じました。

このお二人は任天堂の社員もしくは関係者のようで、背景知識がとてつもなく豊富なのでこうした通訳が可能なのかもしれません。インハウス通訳では常に専門の内容を訳しているのでこういう感じになっていくのだと思われますが、ここまでテキパキと訳してくださったらかなり重宝される・重用されるのではないでしょうか。うちの学校の留学生もインハウスでの通訳のお仕事を目指している方が多いのですが、通訳というお仕事は「話せれば訳せる」わけではなく、背景知識の豊かさが的確な訳出を担保しているのだということ、その一つの例として紹介したいなと思いました。

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