インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

Simon Stålenhag 氏の世界にひかれる

スウェーデンの画家で Simon Stålenhag という方がいます。私はずいぶん前にネットでこの方の絵を見かけて、その独特の世界観に引き込まれてしまい、画集こそ持っていないのですが、ちょくちょく氏のウェブサイトに行ってはその作品の数々を眺めています。

www.simonstalenhag.se

なんでしょうね、この近未来SFのディストピア感あふれる荒涼とした風景。ただならぬことが起こっていそうな雰囲気。それでいて、そこはかとなく漂うユーモアと、郷愁にも似たほのかな温かさも感じるのです。まるで『男はつらいよ』シリーズの映画で、寅さんが夜汽車に揺られながら「あそこにも電灯がともっている。そこにも人の暮らしがあるんだなあ……」とつぶやくような感じ。

また一面では、ちょっとレトロなパソコンやOA機器が持っていたようなガジェット感もありますし、大友克洋氏の『アキラ』を彷彿とさせるメカニカルなものと気味の悪い「ぬめぬめ」が融合したような雰囲気もあります。暗闇や陰影はとことん暗く、逆に明るい風景は隙間がないほどフラットに光が当たり、北欧の冬を想起させる鈍重な雲や雪原や枯れ野原が広がっていて……。

写真と見まごうばかりの細密描写に見えますが、よくよく細部を観察してみると、かなりラフなタッチで描かれていることが分かります。このあたり、フェルメールの描き方にも通じるものがあるように思います。

遠景には賑やかな都会(ネオンサインの表現が特にすばらしい)が描かれる場合でも、手前は荒涼とした風景が広がっているというその「賑やかなものを遠くから眺める」感覚も、個人的には大好きなテイストです。海外を旅行するときも、バイクや車を借りてこういう場所に行くのが好きになりました。観光地や歴史的建造物やごちゃごちゃとした繁華街は人が多すぎて酔ってしまうのです。

きっとスウェーデンの田舎に行けば、こうした風景があちこちに見つかるのでしょう。いつかこんな風景を探してふらふらと旅をしてみたいと思います。

……と、ネットで Simon Stålenhag 氏を検索していたら、氏の画集『The Electric State』の日本語版が発売されたとの情報が。翻訳は山形浩生氏。おおお、さっそくAmazonで購入してしまいました。さらには別の画集『Tales From The Loop』を元にした映画も、近く撮影が開始されるとのこと。これはとても楽しみです。日本でも公開されるといいですね。

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エレクトリック・ステイト THE ELECTRIC STATE

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