インタプリタかなくぎ流

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琺瑯の食器に勝手なノスタルジーを感じる

先日、うちの学校を卒業していった中国人留学生から「お世話になりました」と小さな包みが届きました。中に入っていたのは、これ。琺瑯引きの蓋付きマグカップです。毛主席語録(毛沢東語録)を掲げた人々の図案は、かつての文革時に大量に作られたプロパガンダポスターを模したもの。このマグカップは復刻、というか「なんちゃって」的お遊び商品ですが、かつては本当にこういうテイストの食器類が使われていたんですよね。

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二十年ほど前、中国に留学しているときは、休みの日に骨董市などを巡って、こういうテイストの食器やポスター、服や徽章(毛沢東バッヂみたいな)のたぐいを渉猟していました。当時から既に値段が高騰し始めていて、買うことは少なかったですが、それでも何枚かポスターや小物類を買って、それはいまでも大切に取ってあります。

琺瑯の日用雑器類も、最近ではステンレス製が中心……というか、そもそもこういう食器類があまりに古くさいので使わないと言う人も多いでしょうけど、逆に今となっては「レトロ」な感じで面白いですよね。留学しているときはもう少し大きめで浅めの、ちょうど小型のバースデーケーキ(ホール)くらいの形と大きさの琺瑯食器を使っていました。脇に金魚の絵なんかが描いてあったりして。蓋付きで、蓋はお皿の代わりにもなるんです。

これを持って学生食堂へ行き、ご飯とおかずをどんど〜ん! と放り込んでもらって食べていました。懐かしいです。当時でさえこういう琺瑯の食器はすでに「古くさい」感じになりつつあって、中国人学生の友人からは「物好きだね」などと言われていたのですが、私は私なりに勝手なノスタルジーを感じていて、愛用していました。

ほかにも魔法瓶を現役で使っていて、毎朝学生寮の給湯室へお湯を取りに行くのが日課でした。電気ポットじゃなくて魔法瓶なので、お湯はどんどん冷めて行っちゃうんですけど、そんなときは魔法瓶の蓋のコルクに電熱ヒーターの棒がくっついたような「再加熱機」を使ってお湯を温め直していました。後年これは火事の原因になるとか何とかで使用禁止になったと聞いていますが、ああいうのも含めて牧歌的でした(これもまた勝手なノスタルジー)。魔法瓶の「中身」は銀色に光るガラス製で、ちょっと衝撃で割れちゃうことがあったのですが、街の雑貨屋さんにはその「中身」だけ売っている場所もありましたね……。

そんなこんなの思い出を授業で話したことがあったのですが、現代の中国人留学生は、あるいは「聞いたことない」ときょとんとしていたり、あるいは「懐かしい! 子どもの頃使ってました!」という人がいたり。でも、それで卒業に際して、記念にわざわざ「淘宝(タオバオ)」で買ってプレゼントして下さったのですね。

ありがとうございます。職場で使わせてもらうと思います。まずは、そうですね……当時を偲んで、この琺瑯マグカップに即席麺を割り入れてお湯かけて食べてみましょうかね。